川鍋一朗氏「ライドシェアは労働者に優しくない」 拙速な全面解禁はワーキングプアを生む可能性
東洋経済オンライン / 2024年1月22日 11時30分
「日本型ライドシェア」の導入は決定したが、同時に既存タクシーの供給力を最大化する取り組みも進めているのだ。タクシー業界は、昨夏から突如として盛り上がったライドシェア議論について、一貫してイコールフッティングを求め続けてきた。
日本で提唱されているライドシェアの定義は現状、曖昧な箇所も多く、それが現場や識者すら混乱させてきた面がある。また、仮に事故が起きた際の責任の所在をアプリなどのプラットフォームに求められるのか、安全・安心輸送の不安も指摘されてきた。
競争促進なら公共交通機関と同等の条件を
川鍋氏は、「既存の公共交通機関との競争を促すという意図を考慮してのライドシェア解禁というのであれば、運行管理や営業地域・運賃など最低限同等の条件でなければ健全な競争は成り立たない」と言う。
「ライドシェア導入の経緯は、雇用や安全性という旅客運送で守られなければいけないことよりも、短期的な利便性ばかり見られていた、と感じます。定義が曖昧なまま、客観的データを重視するわけでもなく、ライドシェアありきで進んできた面もありました。最大の懸念はいったんスタートすると簡単には元には戻せない、ということです。
そんな中でタクシー業界としては、国土交通省に求めていた二種免許取得などの規制緩和については、スピード感を持って対応いただけたので現場は人員が回復傾向にあり、好循環が起きていると感じています」(川鍋氏)
タクシーを含むバスなどの公共交通は、安全・安心の観点から「規制産業」として発展してきた歴史がある。1950年代には「神風タクシー」と呼ばれた無謀運転が横行したことで規制が本格化され、1960年代にはタクシーセンターも設立した。2016年には41名の死傷者を出した「軽井沢スキーバス転落事故」が発生しているが、大きな事故などを節目に、規制が強化されてきた。
「公共交通機関として、有事を避けるための知見や厳格なルール管理、万が一事故が起きた場合の責任の所在を明確にしなければいけません。それがプラットフォーム型のライドシェアだと明確にしにくい面がある。そもそもビジネスモデルに運行責任や最終責任という概念が組み込まれていないからです。そのためにもタクシー会社が管理を行う必要があるのです。
規制と緩和を繰り返してきたのが我々タクシー業界でもあり、その歴史の中でこれだけ安全・安心を徹底しても残念ながら事故は起きてしまうものです。特に日本のタクシーはトリップアドバイザーで世界一を獲得するほど評価が高く、その基準に国民も慣れている土壌があります。『日本型ライドシェア』の運行は、事故を起こさない制度づくりを含め、我々の存在意義をかけた闘いになるでしょう」(川鍋氏)
海外のライドシェアは労働者が優先されていない
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