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川鍋一朗氏「ライドシェアは労働者に優しくない」 拙速な全面解禁はワーキングプアを生む可能性

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 11時30分

川鍋氏は、コロナ前までは毎年ライドシェアの視察で海外を訪れ、各地で利用もしてきた。その経験から、「海外のライドシェアは労働者優先のビジネスではなく、あくまでプラットフォーマーや株主主体のビジネスの域を出ない」という結論に至った。

「前提として、ニューヨークのような大都市でもドライバーさんの収入はとても不安定。安定して稼げる仕事ではない、ということです。例えばマンハッタンでは、車の中で15%程度ライドシェアが占める割合が理想とされています。裏を返せば、それだけたくさん車両があって、顧客の奪い合いになっているということです。

つまり車両の増加はライドシェアだけではなく、タクシーなどの賃料も相対的に下げることになります。これではまったくもって労働者に優しくなりません。そこはしっかりと理解していただきたい部分でもあります。その視点からも全面解禁には反対です」(川鍋氏)

ライドシェアの本質的な問題点としては、安全性と並び持続的なサービスが可能か、という点も挙げられてきた。既存のタクシー会社の管理下に入るという案でいうならば、そもそもドライバーの確保が難しいだろうという根本的な課題にぶつかる。

筆者は業界団体の他にも、永田町で議員や省庁への取材も重ねてきたが、一番多く聞かれたのは「限定型のライドシェアは業界、利用者、ドライバーの誰の得にもならない」という考えだった。場当たり的な解決策として限定的なライドシェアを解禁することは、回復傾向にあるタクシードライバーの採用にも歯止めをかける可能性があり、ライドシェアが稼げる土壌がないまま市場が解禁されると、利用者やドライバーにもネガティブな印象を与えかねないからだ。その懸念が顕在化されようとしている今、川鍋氏は以下のような問題提起をした。

先行した欧州では規制回帰の流れ

「海外型ライドシェアはワーキングプアを引き起こしかねないシステムです。その影響はライドシェアのドライバーだけではなく、他の公共交通にも派生します。1つの例として、コロナ禍に浸透した『ウーバーイーツ』などフードデリバリーのドライバーの収入は今、どうなっているのでしょうか? ライドシェアをむやみに導入して、結局ドライバーが集まらない、定着せずに持続的なサービスが提供できなかった場合、はたしてどこがそれを補うのでしょうか。

ライドシェアという概念がなかった日本で、先行した欧州の規制が逆に強まっている今、周回遅れで本当に必要なのかをここでしっかり検討すべきです。タクシー業界としては、回復傾向にある乗務員増加をさらに加速させ、都市部・観光地・地方や過疎地それぞれの客観的データに基づく等身大の課題に応じた対策を速やかに講じるなど、できることを全力でやっていくことで適切な需給バランスに近づけることができると考えています」

タクシー業界の切なる訴えは、利用者にとっても決して他人事ではない。今後はガイドライン策定に尽力しながら、運行開始する4月までにまずは数百人のドライバー確保を目指していく方針だ。

栗田 シメイ:ノンフィクションライター

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