JR「自動運転・隊列走行BRT」公道走行で見えた課題 東広島市で実証実験、信号や割り込みどう対処?
東洋経済オンライン / 2024年1月22日 6時30分
ブールバールには駅と大学を結ぶ路線バスが走っているが、広島大学の学生数は約1万1000人、教職員数は約5000人。ブールバールの整備に合わせ、市はバスよりも大量の旅客を輸送する新交通システムの導入を模索していた。「当時はLRTやモノレールを想定していた」と市の担当者は話す。この構想は日の目を見ないまま年月が過ぎた。市は「市内の移動を支える公共交通の利便性が十分でない」として、効率的で利便性の高い公共交通の実現を模索している。
一方、広島大学は次世代の公共交通サービスの構築に向け、キャンパス内で自動運転のEVシャトルバスを運行させる実証実験を2021~2022年に行っていた。そして、JR西日本も公道を使った自動運転・隊列走行BRTの実証実験の場を探していた。
この点において、JR西日本、東広島市、広島大学の思惑が合致した。3者は2022年11月に連携協定を締結、2023年11月から実証実験がスタートした。準備運転や技術検証を経て、実際に客を乗せて運行する試乗会が1月10日から2月4日までの日程で行われている。
西条駅近くの中央公園前バス停を出発し、広島大学で折り返して同バス停に戻る。路線バスと同じルートをたどる1周約12kmの行程だ。JR西日本のテストコースでは連節バス、大型バス、小型バスの3台で隊列走行したが、今回隊列を組むのは連節バスと大型バスの2台のみ。テストコースでの実証実験との違いはほかにもあり、テストコースではGNSS(衛星測位システム)と道路上に一定間隔で埋設した磁気マーカーを使って車両の位置を検知していたが、今回は公道ということもあり、磁気マーカーの埋設はせず車両の位置検知はGNSSのみで行われている。
また、信号との連携もしていない。「西陽が差した場合などに信号の色を100%認識できないケースがあるため灯火認識に加えて信号機から灯火情報をもらうという二重の方法で信号連携を行う必要があるが、そのような実験の実施に向けた協議調整を行うことが今年度は間に合わなかったため、今回は見送った」と、JR西日本でこの事業を担当する近藤創・次世代モビリティ担当課長が話す。
路駐は手動回避、隊列走行にも課題
1月10日の試乗会が報道陣向けに公開された。報道陣は前方の連節バスに乗る。出発したバスは速度をぐんぐんと上げ、時速40kmで走行する。前方に車が入ってくると速度を落として車間距離を保つ。ルートにはやや勾配がある区間がある。「勾配での発進の際、当初はバスが後退したこともあったが、加速力を調整して後退せず発進できるようにした」(近藤担当課長)。確かに乗り心地はスムーズで手動運転と変わらない。
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