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JR「自動運転・隊列走行BRT」公道走行で見えた課題 東広島市で実証実験、信号や割り込みどう対処?

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 6時30分

運転席の様子を観察していると、運転士の手はハンドルの近くにあるがハンドルには手を触れていない。ただ、自動運転区間でも時折、手動操作をしている。手動運転に切り替わるケースはいくつかある。まず、信号と連携していないため信号の手前では手動運転を行う。また、高架下の走行時などGNSSの電波が弱く車両の位置検知に支障がある箇所でも手動運転を行う。さらに、バスは歩道寄りを走るため、車が路上駐車などで路肩に止まっていることがある。「技術的にはさまざまなセンサをつけていけば自動運転で回避することも可能と考えるが、大型バスでそれを目指すと開発などに時間やコストも増えることや、路上駐車はバス専用レーン設置によって解決可能な課題である点を踏まえて、今回の実証実験では手動運転で回避することにした」(近藤担当課長)。

全ルートにおいて隊列走行を行うわけではなく、隊列走行区間は一部に限られている。走行の途中で信号が赤に変わると隊列が途切れる可能性があるため、信号連携を実施していない今年度の実験では、信号がない1.5kmの区間のみを隊列走行することにしたのだという。

また、隊列走行の課題は信号以外にもある。今回はバスとバスの車間距離を10mあけた状態で出発し、その後は20mまで広げる。貨物トラックの後続車無人隊列走行の実証実験が高速道路で実施されているが、車間距離は10m程度に抑えている。トラックとトラックの間にほかの車が割り込まないように車間距離を短くする必要があるのだ。

バスについては「トラックと違いバスは客を乗せて走るので、安全のため十分な車間距離を取らざるをえない」(近藤担当課長)。そのため、車間距離が20mの状態でほかの車が割り込んできた場合には隊列走行は解除される。ほかの車の割り込みや信号の問題を避けるためには、バス専用レーンやバス優先信号を導入するしかない。

「できるだけ早く社会実装したい」

公道を走行する場合の課題はほかにもある。後続のバスに運転士が乗車しない場合、運賃収受は交通系ICカードで対応できたとしても、現金払いの客をどうするか、車いすの客の乗降をどこまで手伝うかといったことだ。課題は山積だが、東広島市の高垣広徳市長は「できるだけ早く社会実装できるようにしたい」と意気込む。

既存の道路をバス専用レーンにすると、かえって交通渋滞の悪化につながりかねないが、高垣市長は、「中央分離帯の活用を考えている」と話す。市の担当者に尋ねると、「新交通システム構想でもブールバールの中央分離帯のスペースを活用することが検討されていた」という。

BRTとはBus Rapid Transit(バス高速システム)の略称であり、バス専用レーンやバス優先信号を組み合わせてこれまで以上に早く・時間どおりに目的地に到着できるバスシステムだが、今回はバス優先レーンを設けず信号との連携も見送ったため、BRTとは言い難い部分がある。その意味ではBRTではなく自動運転・隊列走行バスの実証実験ということになる。

しかし、東広島市が将来的に目指しているのは自動運転・隊列走行BRTである。その導入によって、便利で質の高い移動ができるようになるという。中央分離帯をバス専用ルートとして整備するとなればかなりの投資が必要となるが、市にはその覚悟があるということなのだろう。

今年は東広島市が誕生して50周年を迎える節目の年だ。もし自動運転・隊列走行BRTの社会実装に動き出すことが決まれば、50年来の夢の実現に向けた第一歩となる。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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