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「自然資本」への対応には日本の伝統文化が重要だ SDGsと「鎮守の森」やアニミズム文化をつなぐ

東洋経済オンライン / 2024年1月23日 9時0分

論点をいくつか整理すると、現在の日本においては人口減少、それに加えて一極集中ないし都市集中が進んでいる結果、自然資本のいわゆる「アンダーユース(未利用あるいは過小利用)」の問題が生じている。

これは日本において「自然資本」や生態系保全のテーマを考える場合のきわめて重要なポイントと言える。つまり一般的には「自然資本」あるいは生態系保全というと、森林の過剰伐採など「オーバーユース」の問題が念頭に置かれるわけだが、日本の場合は上記のように人口減少等の要因から、それとは逆の問題が発生しているのだ。

政府や公的部門の対応が必要

ではどのような対応がなされるべきか。

まず単純に言えば、先ほどもふれた“多少高くても国内産の木材を消費者が買うようにする”という方向が考えられる。

しかし現実問題として、消費者に上記のような行動を期待することには限界がある。そうすると、(市場経済のみでの解決は困難ということで、)政府ないし公的部門の対応が必要ということになり、さまざまな公共政策(各種の補助金や従事者の所得保障など)が重要な意味をもつことになる。

実際、ヨーロッパ諸国は「持続可能な森林経営の強化」「持続可能な森林バイオエコノミーの推進」といった視点に立ち、特に環境保全の観点からのさまざまな支援策を展開している(「EU森林戦略2030」)。

以上は「市場(私)」または「政府(公)」による対応ということになるが、これらに加えて、「コミュニティ」あるいは先ほど言及した「コミュニティ経済」という発想からの対応が考えられるのではないか。

それは“多少価格が高いとしても、国産材を使えばそれによって林業や関連事業に携わる従事者の収入や雇用増にもつながり、めぐりめぐって地域全体の賃金上昇や経済活性化につながる”という考え方である。

言い換えれば、「価格の高い国産材を買うこと」はさしあたってはマイナス(損)だが、域内の経済循環を通じて、最終的には当人にとってもプラスの恩恵が戻ってくるという発想である。

そのように考えられるか否かは、まさに上記の「めぐりめぐって……」という発想をもてるかどうかにかかっているだろう。「めぐりめぐって……」という日本語は、すなわち「循環」ということであり、「コミュニティ」とも重なる。つまり相互扶助あるいは“ペイ・フォワード”の循環であり、いわゆる「情けは人のためならず」の発想でもある。対照的に、「市場経済」の本質は“無限に開かれた空間”ということであり、そこでは「循環」は本来的な意味をもたない。

循環の思想が失われている

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