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今の戦争が終わっても、元通りにはならない理由 ケインズ著『新訳 平和の経済的帰結』(書評)

東洋経済オンライン / 2024年1月24日 10時0分

要するに、第二次グローバリゼーションがはらんでいた構造的矛盾から目を逸らしていたのである。ケインズの表現を借りれば、彼らは、グローバリゼーションが「普通で、確実で、永続的か、変わるにしてもさらに改善されるしかありえないと思っており、そこから少しでも逸脱があれば、それは異常なことであり、とんでもない話であり、回避できたはずだと思っていた」のだ。しかし、実際には、トランプ政権を襲ったバイデン政権は、前政権の脱グローバリゼーション路線を実質的に引き継いだのである。そして、今年、再び大統領選がある。

第二次グローバリゼーションの30年間というものは、冷戦終結後のアメリカという覇権国家の一極体制という、極めて特異な国際環境の上に成り立っていたものであった。そのアメリカが衰退し、もはや世界秩序を支える覇権国家としての役割を果たせなくなったのであれば、その上部構造の第二次グローバリゼーションもまた終焉する(『富国と強兵――地政経済学序説』 を参照されたい)。

こんなことは、さして難しい話ではないようにも思われる。それにもかかわらず、なぜ、この政治経済学的構造が見逃されてしまったのであろうか。その答えは、『平和の経済的帰結』の冒頭に見事に書いてある。

人類の顕著な特徴として、自分を取り巻く環境をあたりまえのものと思ってしまうということがある。西ヨーロッパが過去半世紀にわたり頼ってきた経済的な仕組みが、きわめて異例で、不安定でややこしく、信頼できない、一時的なものでしかないということを、はっきり認識している人はほとんどいない。(p.2)

中野 剛志:評論家

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