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金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」

東洋経済オンライン / 2024年1月25日 7時0分

一部業務停止に踏み切れず、弱腰の姿勢に批判が高まっている金融庁(記者撮影)

中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題をめぐって、金融庁は1月25日、損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングスに対して、保険業法に基づく業務改善命令を出す方針だ。

【写真】業務停止を免れた損保ジャパンからは「危なかった。セーフ(笑)」と安堵する声が漏れる

金融庁は当初、保険会社が不正請求の隠蔽に加担するという悪質性などを踏まえ、損保ジャパンに対して一部業務停止の命令を加えることを視野に入れていた。改善命令に業務停止が加われば、行政処分としてはより重くなる。

ところが、4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。

金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる。いったいなぜ金融庁は一部業務停止に踏み切れなかったのか。その舞台裏を探った。

実質1営業日で処分を決定

そもそも今回の行政処分をめぐって、金融庁が処分内容について議論を尽くしたとはお世辞にも言えない。

金融庁が立ち入り検査を実質的に終えたのは1月18日、検査結果と処分内容を通知したのは同22日だ。通常は、検査終了後3週間前後の期間を経て処分を決めるが、今回はそれが実質1営業日。検査終了前から、処分の方向性を早々に固めていたとしか思えない。

「ビッグモーターの経営がすでに立ち行かなくなっている状況で、新たな不正請求が生じるリスクはもはやない。であれば、不正請求防止のために、損保ジャパンの業務を一部停止するという理屈が立たない。ペナルティや見せしめとして停止するというのも、おかしな話だ」

金融庁のある幹部は、一部業務停止の判断に至らなかった経緯についてそう解説する。一見もっともらしい理由だが、これはあくまで建前とみられる。

別の幹部によると、その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。

事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう。業務停止とする理屈も十分に立つはずだ。

「スーパーマンでもない限りとても手に負えない」

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