台湾と韓国で同時台頭する政界「第3極」に注目せよ 世界秩序の歴史転換に日本は鈍感だ
東洋経済オンライン / 2024年1月25日 10時0分
対中関係については台湾有権者の多くは、統一でもなく独立でもない「現状維持」を今後も選択する。統一支持はせいぜい10%、独立は中国の武力行使を招く恐れがあり、安保の後ろ盾のアメリカや日本も支持しないことを有権者は知っているから、現状維持しかない。国民党と民衆党も現状維持支持だ。
韓国で結成された保守系新党
一方、2024年4月に総選挙を控える韓国でも、台湾総統選直後の1月15日、保革2大政党に不満を持つ層を取り込もうとする「第3極」を目指す動きが表面化した。
保守系与党・国民の力元代表の李俊錫(イジュンソク)氏が「改革新党」の結党大会を開き、李氏は「市民が本当に期待する論題は何かを見せる時がきた」と結成理由を述べた。2大政党がこれまでの選挙で争点の主軸にしてきた政策見直しの含みがある。
台湾と韓国は、日本の植民地支配を経た後、戦後はアメリカとの軍事同盟下でそれぞれ中国、北朝鮮と対峙してきた点で共通する。冷戦下で両者は「反共の砦」として中国と北朝鮮との軍事衝突の最前線になった。当時は両者の政治はアメリカの後ろ盾を背景に「独裁体制」だった。
しかし1980年代に入ると両者はともに民主化を進めた。アメリカのコントロール下にある政治を変えねば、民主化の成果と有権者の支持は得られないためである。
一方、「敵」との和解も同時進行した。成長する台湾、韓国の経済成長を加速させることがアメリカの利益になるから容認したのだ。日本の植民地支配大戦後も、台湾と韓国政治が似ているのは、新しい「支配者」のアメリカが内政を決める主要因だったからだ。
韓国側では2000年に、当時の金大中大統領と金正日総書記の初の南北首脳会談が実現。台湾では2015年に、国民党の馬英九総統が習近平・中国国家主席との初首脳会談が行った。
だが和解は長く続かない。台湾では首脳会談によって中国の統一攻勢が強まることに反発する声が高まり、翌2016年の総統選挙で政権交代した。
韓国側を見れば2018年5月、トランプ・金正恩総書記との初首脳会談が実現、敵対関係に終止符を打ち、文在寅大統領も強力な後押しをした。
しかし2020年の大統領選挙では南北和解に消極的な保守派の尹錫悦大統領が当選。いずれも台湾と韓国で「敵」との和解の動きに、選挙でブレーキがかかった形だ。
第3極台頭の背景に中国あり
敵との和解にブレーキがかかる台湾と韓国の選挙結果は、2016年に誕生したトランプ政権が台頭する中国との米中対立を開始し、同時に同盟関係の見直しが背景にあった。バイデン氏が同盟関係を再強化する政策変更と連動している。米中対立の背景は、台頭する中国とアメリカの衰退だ。
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