表面的に羽振りよく見える人にも貧乏の影は迫る お金、時間、知識、信頼の収支のバランスが重要
東洋経済オンライン / 2024年1月26日 11時35分
この人は、わずかな時間を節約するために信頼という資産をお金に換えてしまったわけだ。こうした人は、たとえ一度かぎりで安易にお金を借りられたとしても、より大きな商売の機会を逃してしまう。その結果お金も時間も信頼もなくなっていく。
さらに、世界的にみると知識・情報の貧困がお金や時間のさらなる貧困をもたらすという悲劇がみられる。
たとえば発展途上国に住む人々の死因の上位に下痢がある。このとき、発展途上国の人々は往々にして下痢に対し抗生物質や注射を用いた治療を要求する。しかし、下痢から命を救うには本当は経口補水液があればよい。しかも経口補水液を作るのに必要な塩、砂糖、水、レモンは発展途上国であっても誰でも比較的簡単に手に入れられる。
だが、経口補水液の知識・情報を持っていないために発展途上国の多くの住人はお金の面でも時間の面でも高くつく治療を選ぶ。結局のところ効きもしない高価な注射を求めて行列を作り、場合によっては注射針から別の病気をもらってしまったりするのである。
もちろん先進国の住民たちに発展途上国の人々の勉強不足を責める資格はない。発展途上国では、母国語で利用できる情報サイトや基礎的な保健衛生教育へのアクセスが限られているためだ。先進国の住民も、もしその国に生まれていなければ同じ罠から抜け出せなかっただろう。
不明確な目的がもたらす「貧乏の罠」
このように、どんな人でもお金、時間、知識、信頼の収支のバランスを崩すことで貧乏から抜け出せなくなってしまう危険がある。
たとえば「借金はどんな種類のものでも怖い」という思い込みから貸与奨学金を忌避するあまり、大学を休学しながら学費を稼ぎ、新卒就職において不利な立場に追いやられて生涯年収をふいにするといった失敗はよくみられる。
あるいはSNSとゲームとカメラくらいにしか使わない(それ以外の機能はそもそも使えない)のに「最新機種でないと恥ずかしい」という思い込みから、新作のハイスペックスマートフォンを毎回発売直後に買い、割賦金の支払いにいつも追われているという例もよくみる。
また、高給取りの頭脳労働者が「デキるビジネスパーソンとして家事・育児も自分でやらなければいけない」という思い込みから、睡眠時間を減らしてまでそれらに奔走している例もある。
こうした人は家事・育児の少なくとも一部を外注した方が仕事の生産性も上がり、外注費以上に稼ぐことができるのに、貧乏の罠にはまる。
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