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先進国で「出生率低下」嘆く人に知ってほしい視点 大家族を作らないという選択は「利己的」なのか

東洋経済オンライン / 2024年1月26日 19時0分

集団の価値観で出生率は変わるのか(写真:Graphs/PIXTA)

日本をはじめとする先進諸国では都市部を中心に出生率の低下が社会問題となっていますが、超正統派ユダヤ教徒であるハレーディームは、アメリカ国内においてほぼ例外なく都市部に居住しながらも出生率が高く、人口が急増しています。

宗教や信条といった集団の価値観が、出生率に影響することはあるのでしょうか。ロンドン大学の人口学者であるポール・モーランド氏が、2人の女性の事例を紹介しつつ解説します。

※本稿はポール・モーランド氏の新著『人口は未来を語る』から一部抜粋・再構成したものです。

出生率の高い白人集団「ハレーディーム」

超正統派ユダヤ教徒(ハレーディー、複数はハレーディーム)もまた、アメリカで人口拡大中の白人集団である。ほかの高出生率のマイノリティとは異なり、ハレーディームはほぼ例外なく都市部に住んでいて、しかもだいたいは出生率が低い州の都市部である。

それにもかかわらず、ブルックリンのウィリアムズバーグやバラパークには数万人規模のハレーディームのコミュニティが複数あり、その家族規模は世界でもっとも出生率の高い国々の家族と変わらない。人口は急増していて、今のところその勢いが鈍る気配はなく、当然のことながらコミュニティは新たな住宅を求め、居住域を広げつつある。

ハレーディームはイスラエルの人口増加にも寄与している。長期にわたって大家族を築いてきた集団では普通のことだが、彼らのコミュニティも若い。彼らの場合、人口の60パーセントが20歳以下だが、彼ら以外のユダヤ人全体では30パーセントが20歳以下である。だがイスラエルで子だくさんなのはハレーディームだけではない。出生率は宗派を問わず全体的に高く、先進国とは思えないレベルである。

イスラエルの女性はシンガポールの女性のほぼ3倍の子供を産んでいて、それでいて教育水準も高い。またアメリカと同じようにイスラエルでも、信心深いかどうかとは別の問題として、政治的に保守的な集団のほうが子供の数が多い。

「イスラム教徒の方が子供が多い」は思い込み?

なんらかの価値観に基づいて出生率が変わることがあれば、人口動態に関するわたしたちの想定の多くが覆ることになる。ユダヤ人の子供の数は、イスラム教徒が圧倒的に多いアラブ人などの諸民族よりも少ないと思っている人がいたとしてもおかしくないが、それはもはや事実ではない。1980年代前半には、イスラエル人女性が産む子供の数はイラン人女性の半分にも及ばなかった。今ではそれよりずっと多くなっている。

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