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1カ月で5%痩せた高齢者「低栄養」が恐ろしい訳 半年で10%減も注意、BMIと併せてチェックを

東洋経済オンライン / 2024年1月27日 16時0分

このサルコペニア肥満は、医学界ではこれから日本における診断基準などが発表される予定の、まだ比較的新しい概念です。

とはいえ、栄養の現場を見渡してみると、その状態にある人はすでに多くいて、コロナ禍のもとで活動が低下し、体重が増えた人も多かった影響で、サルコペニア肥満の人も増えた印象をもっています。

低栄養と過栄養。真逆のようですが、高齢期にはどちらも「フレイル」「要介護」につながる原因となり、健康寿命を縮める直接的な原因になります。

どちらも、食事の内容や量の変化による「栄養不良」、代謝に障害を起こす「栄養障害」と呼ばれる状態です。

栄養が機能しなくなると、いのちを保つために体内で営まれるさまざまな「生体内化学反応」が停滞するため、病気になりやすく、病気やけがが治りにくくなって、いのちの危機につながります。

ひと月で何㎏やせたら心配すべきか?

高齢の人の低栄養の危険を見つける目安は次の2つです。

・体重が6カ月間で10%ほど減少(または1カ月で5%以上、3カ月で7・5%以上)

・BMIが18・5未満=「やせ」の範囲である(これより下がるほど死亡率は高くなる)

体重の変化とBMIでリスクがあるのがわかったら、病院で受ける血液検査で血清アルブミン値、コレステロール値、ヘモグロビン値などを調べ、診断を受けましょう。

もしも低栄養であったなら、医師の診療を受けながら、管理栄養士から栄養障害の治療となる指導を受けて食生活を見直し、なるべく早く低栄養から脱出しなければいけません。

高齢期には病気やけがで治療が必要になることが増えます。低栄養の状態では「なりやすく、治りにくい」と同時に、治療によって生じる体への負担(「侵襲(しんしゅう)」と呼びます)をともなう場合には治療の継続が困難と判断され、十分な治療ができない場合もあります。

簡単に言うと「栄養状態が悪いから、とても手術には耐えられない」といった判断になることがある、ということです。治療ができても、低栄養状態の人は侵襲のダメージが出やすく、予後がよくありません。

太ったまま年をとると「サルコペニア肥満」の危険大

一方、過栄養の危険について判断するのは難しく、さまざまな研究で、75歳以上の人の場合、BMI判断基準では肥満とされる「25以上」の人が長生きするという結果も出ているため、持病の有無や病状によって個別に適切な減量・筋肉増強・栄養ケアを行うのが望ましいです。

というのも、先にご説明した、太ったまま高齢になり、筋力が低下してしまった状態の「サルコペニア肥満」では、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳血管障害、脂肪肝といった生活習慣病をすでに合併していることが多いからです。

しかし、しっかり栄養をとりながら、体重を落として脂肪細胞を減らしていけば、こうした生活習慣病に関係するホルモン分泌などが変わり、栄養状態と病状の両方を改善していくことができる場合があります。

まずは標準体重まで減量できなくても、現体重から3%以上の減量を目標にし、筋肉を維持・増強しながら達成しましょう。それには個別対応がどうしても必要になります。

川口 美喜子:医学博士、大妻女子大学家政学部教授

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