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半チャンラーメンが「消滅」していく"切ない理由" 町中華メニューが以前より簡単に提供できぬ背景

東洋経済オンライン / 2024年1月27日 11時50分

店主の中華鍋のカンカンカンという音のボリュームがすさまじく、ラーメンを啜りながら何度もビクッとしたことがある。

パラパラではなくモチッとした米の食感が印象的なチャーハン。強火で炒めて表面を香ばしく焼き上げており、ところどころ焦げが出ているのがうれしい。これぞ町中華のチャーハンだ。

閉店のニュースを聞いて、多くの常連やファンたちがお店を訪れた。「たいよう軒」に行列ができているのを久しぶりに見た気がする。

高齢の店主さんと女将さんで切り盛りされており、女将さんは何度も腰が痛そうにしていた。体力的にも限界が来たのだろう。

厨房に閉店を告げる小さな紙が貼られていた。

お知らせ

長い間ご利用いただきましたが、この度一月二十六日をもちまして、閉店させて戴きます。


長年のご愛顧に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

たいよう軒

半チャンラーメンが衰退する3つの理由

2017年11月に、筆者は「半チャンラーメンが静かに衰退している理由」という記事を配信した。冒頭で触れた、同じく「神保町半チャンラーメン四天王」の一角だった「さぶちゃん」閉店時に書いたもので、半チャンラーメンが静かに衰退する理由を①価格の問題、②現在の健康志向に合わないこと、③つくる作業に手間がかかることと分析していた。

ラーメン店や中華店には、つねに「1000円の壁」という課題がある。1000円を超えると、いくら美味しくても食べ手が高いと感じてしまう傾向があり、値段を上げにくいなかで、庶民の味方である「半チャンラーメン」を1000円以上にするのはまずニーズに合わない。「厨房で鍋を振るう」という工程が1つ加わると、作る側にとっては想像以上に大変になるし、そして、そもそも現在の健康志向には合わない……。このような分析のうえで、さらに、当該記事では「今後はチェーン店の独擅場になるだろう」と予想した。

しかし、それから6年以上が経過し、事態は想像以上になっている。

まず、ラーメンの「1000円の壁」問題が想像以上に進展した。ラーメン単品で1000円で提供することが難しい中、半チャーハンをセットで出すというのはまったく現実的ではない。

半チャンラーメンは持ち物件で、家族経営で運営していてランニングコストの高くない老舗の町中華だからこそ、提供できるメニューなのである。

「たいよう軒」のラーメン&半チャーハンはなんと750円。

今この価格帯で半チャンラーメンを提供できるお店がどれだけあるだろうか。ラーメン単品でも750円で出すのは難しいのではないだろうか。

薄れる「家業」という考え方と「後継者問題」

町中華においては、「後継者問題」がネット上で指摘されることがよくある。しかし、筆者はこれについては、現実は少し違っていると感じる。

実際は、後継者や店の存続についてははなから考えておらず、自分の代で終わりにしようとしているお店が多いのが現実である。「家業」という考え方は薄れてきており、弟子でも入れない限り承継はない。だが、家族や親戚でない人を雇用すれば賃金問題が発生し、値上げせざるをえなくなる。

つまり、町中華の後継者問題は、「1000円の壁」問題とセットなのである。

町中華とともに姿を消しつつある「半チャンラーメン」。後継者のいない老舗は本当にいつなくなるかわからない。食べたいと思ったらすぐ、迷わず足を運ぶようにしたい。

井手隊長:ラーメンライター/ミュージシャン

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