松本人志不在の「M-1グランプリ」はどうなるのか 審査員になった経緯、若手漫才師に与えた影響
東洋経済オンライン / 2024年1月27日 12時30分
番狂わせを起こす緊張感、また素人のカラオケ選手権と同じく、勝ち進むごとに若手の漫才がうまくなっていくだろうことも大会の魅力になる。何よりも、そのプロセスを視聴者に見せることで漫才の人気は高まっていく、と谷は考えた。
M-1審査員には若手のカリスマが必要だった
もう1つ、谷がこだわったのは審査方法だ。1999年に開始した『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)の会場の一般客100人による投票審査は、「誰にでも確実にウケる漫才が有利」になる傾向が強い。好き嫌いが分かれる漫才師のほうが後々ファンを獲得し売れていくと感じていた谷は、2002年からM-1決勝の地方審査(札幌、大阪、福岡の一般客による審査)を取りやめ、プロの審査員のみの採点システムに統一している。
この“ガチンコの審査”に欠かせなかったのが松本人志だ。前述の『M-1はじめました。』のあとがきで、島田紳助はこう書いている。
「(筆者注:M-1開催にあたって)松本人志も快く審査員を承諾してくれ、これも私には重要なことでした。演者が納得するには、松本人志がいてくれないと困るのです。当時彼は、若手のカリスマでしたから、快くオッケーしてくれ、私が引退するときもM-1頼むなの約束を守り、今もやってくれてることに感謝です」
では、いかにして松本人志は“若手のカリスマ”になったのか。これは、ダウンタウンおよび松本個人の芸風と時代背景の2つの視点から考える必要がある。
漫才ブームで活躍したコンビの多くは、舞台袖から勢いよく登場し、ボケが圧倒的にしゃべるハイテンポな漫才を特徴としていた。
しかし、ブーム後に活動をスタートさせたダウンタウンはゆっくりとセンターマイクまでやってきて、無表情の松本がボソボソとしゃべり、表情豊かな浜田が高い声でキレ気味にツッコむ。テンポを落とすことで、ボケのシュールさと抑揚あるツッコミの対比が際立つ画期的な漫才だった。
1984年に「ABC漫才・落語新人コンクール」(現・ABCお笑い新人グランプリ)の漫才の部で最優秀新人賞、1987年に「日本放送演芸大賞」で最優秀ホープ賞を受賞。同年に帯番組『4時ですよーだ』(毎日放送)がスタートすると関西でアイドル的な人気を博した。
1989年の東京進出後は、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)や『ダウンタウンのごっつええ感じ』、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(ともにフジテレビ系)など、時代を牽引する全国区のコンビとなっていく。
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