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「スマホ依存」の人がハマる宿命的な脳のトラップ ドーパミンの分泌と不安に追われるラットレース

東洋経済オンライン / 2024年1月28日 15時0分

マッチングアプリでプロフィール写真を右へ左へとスワイプしているときも、次こそマッチする相手かと期待しながらスロットを回している」

ハリスのこの指摘には、とりわけ不安をかきたてられる。もうお気づきだろうが、スロットマシーンは、使いたい衝動を抑えられないほど報酬システムを刺激するようあえてつくられた、史上屈指の依存性を持つ機器である。

つねに不安をかきたてるスマホの魔力

進化において不安は重要な要素だ。行動を起こす動機になるからだ(餌の心配をするライオンのほうが、吞気にかまえているライオンより飢える可能性は低そうだ)。

とはいえ、不安は起こりやすく、解消できない場合にはストレス性の症状に発展しかねない。

カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校の心理学教授ラリー・ローゼンによると、スマホは意図的に不安をあおっているという。

手に取るたびに新たな情報を提供し、同時になんらかの感情をかきたてる。それにより、ほんの一瞬でもスマホを置くと、何かを見逃すのではと不安になるのだ。

この不安感は、一般にFOMO(何かを見逃す不安:Fear of Missing Out)と呼ばれている。こちらに比べて過小評価されがちな対義語、JOMO(見逃す喜び:Joy of Missing Out)と混同しないよう注意が必要だ。

人類はこれまでもつねにFOMOにさらされてきた。それでも、その不安に完全に取りこまれずにすんでいたのは、スマホが登場するまでは自分が見逃したものを知ることが容易でなかったからだ。

いったん家を出て(固定電話からも離れ)パーティ会場に行ってしまえば、同じタイミングで別に開かれたパーティのほうが楽しそうだったとしても知るすべはない。

よくも悪くも、目の前のパーティがすべてだった。

結局、スマホがもたらすのは「不安」のループだけ

けれど、スマホがあれば大きな魚を逃しかけていることを簡単に調べられるだけでなく、(通知機能で)くしゃみさながらにFOMOを浴びせかけられる。やがて心の平穏を保つ唯一の方法は、見逃しているものはないかと始終スマホをチェックすることだと確信するようになる。

ところが、それではスマホ起因のFOMOは解消されるどころか、悪化してしまうのだ。

スマホから目を離すたびに、闘争・逃走反応を引き起こすコルチゾールという、ストレスホルモンが副腎皮質から分泌されるようになるからだ。

コルチゾールとは不安を感じさせるものだ。私たちはできるだけ不安を感じたくない。そこで不安を和らげようとスマホに手を伸ばす。

一瞬、気が晴れる。ただし、スマホを置くと……またもや不安が襲ってくる。

FOMOにとらわれているかぎり、スマホを見て、触れて、スワイプして、スクロールすることを繰り返すしかない。不安を紛らせようとする行動は悪習慣のループを強化し、結局、いたずらに不安を増大させるだけだ。

キャサリン・プライス:科学ジャーナリスト

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