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脳梗塞の老人を大移動させたツアーナースの苦悩 後遺症で言葉が話せない84歳男性の長距離移動

東洋経済オンライン / 2024年1月28日 12時20分

失語症の症状もあり、自身の気持ちや思いを言葉にして表現することもできなくなっていた。

倒れてから1カ月間、滋賀県に住む一人娘の奥田清美さん(51・仮名)が、週に1度程度、見舞いに通っていた。しかし、入院期間が長引くに連れ、清美さんの心には不安が積もっていった。

──父は今後も治療が必要だけど、これ以上私が東京に通うのは、お金的にも体力的にも難しい。

清美さんは思い切って、主治医に相談し、滋賀にある療養型の病院への転院が決まったのだった。

中島さんは、東京の総合病院から、娘である清美さんの住む滋賀県の療養型病院に移ることになった。

ツアーに同行するのは「日本ツアーナースセンター」の髙橋博美看護師だ。事前に東京側の病院の医療ソーシャルワーカーが、患者やその家族からの相談を受け、入院中の病棟や日本ツアーナースセンターでアセスメントを行う看護師、転院先の病院などとの調整を行った。

髙橋看護師は次のように語る。

「診療情報提供書と看護サマリーを見ると、中島さんは、医療依存度がかなり高い方であることがわかります。どんな症状なのか、想像しながら、ツアー当日の準備を進めます」

ツアーナースの特殊性

ここで少しだけ、ツアーナースの特殊な事情について説明する。

病気や障害がある方、医療や介護が必要な方の外出や旅行などに付き添って、安全で快適な旅を支えるのがツアーナースの仕事だ。

医療保険や介護保険などの公的サービスではなく、保険外サービスとなり、国内外の旅行や転院、冠婚葬祭への付き添いなど、1人ひとりのニーズにあったオーダーメイド型の看護師付き添いサービスだ。豊富な選択肢が提供されることへの期待は大きい。

そして仕事の性質上、通常の看護師とは違った悩みと苦労がある。

病院、介護施設などで活躍している看護師たちであれば、通院や入院、通所や入居を通じて顔を合わせることも少なくない。日常的に接しているので、その人の症状や治療経過、性格、家族との関係もある程度把握している。そのために、不測の事態が起こった場合も、すぐに適切な対応を取りやすい。

ところがツアーナースは、担当する本人やその家族と旅の当日に初めて会うケースがほとんどだ。ツアーナースたちは、主治医が作った「診療情報提供書」「指示書・手順書(医療的ケアが必要な場合)」や、病院や介護施設、訪問看護などの看護師がまとめた“看護サマリー”と呼ばれる書類を手がかりに、ツアーに同行する本人の症状や状態をつぶさに読み取る。

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