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世界を蝕む「不等価交換」と「外部化」とは何か? 資本主義を乗り越えた先にある「脱成長」の社会

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 11時0分

ただ、私自身は、この「アニミズム対二元論」には批判的な立場です。非西洋的な思想や先住民の実践から学ぶにしても、それをアニミズム的一元論として言う必要はないと考えるからです。

ヒッケル氏が推薦文を書いてくれた『マルクス解体 プロメテウスの夢とその先』(講談社、2023年)に書きましたが、気候変動を含めた環境危機は、どう考えても人間が引き起こしているものです。それを変えていけるのも、人間しかいません。

ですから、持続可能な社会に向けた公正な移行という概念そのものも、私は、常に人間中心主義から逃れられないと考えます。誰のための持続可能かと言えば、やはり「今の文明生活を送りたい」と願う人間にとっての話にならざるを得ません。

グローバルサウスの不等価交換

ヒッケル氏の議論においてアニミズムと先住民など、西欧批判とグローバルサウスの視点が強く出ているのは、彼のバックグランドの影響です。

かつて、資本主義はフリーマーケットに任せれば世界全体を発展させていくという非常に楽観的な議論が流行しました。

それに対してヒッケル氏は『分断The Divide』(未邦訳)という最初の本のなかで、世界銀行やWTOなどの国際機関が、グローバルサウスに構造調整プログラムを押し付けたことで、いかにグローバルノースが富を奪い、借金漬けにして、資源や安い労働力を奪っているかを批判したのです。

この本では脱成長の立場は打ち出されていませんが、南アフリカで生まれたヒッケル氏の経験にも裏打ちされた議論は、世界的なベストセラーになりました。そこで中心となる概念が、「不等価交換」と「外部化」です。

グローバルサウスの労働者たちは、単に生活に必要な賃金のレベルが先進国に比べて低いだけではなく、農村部から出稼ぎに出ることが多いため、たとえクビになっても食い扶持があるという意味で、完全なプロレタリアートではなく、「半プロレタリアート」です。だから、彼らに対しては、本来払うべき賃金よりもさらに安い賃金しか支払われません。

また、労働者たちの賃金を抑えるだけではなく、それに付随して、さまざまなエネルギーや資源、土地などがグローバルノースのために徹底的に利用されています。その土地の養分や、生産に必要な資源もすべて奪うのです。

そして、その資源を使って、先進国は付加価値の高い車やパソコンなどを製造し、それを、グローバルサウスに高値で売りつける。これが、不等価交換です。まさにこのような不等価交換こそが、グローバルノースにとって、経済成長するための条件だったのです。

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