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日本と米国「テック企業」ロビイング活動に見る差 日本企業は求められている事を読む力に長ける

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 16時0分

そういう意味では、両者が、それぞれの得意不得意分野をカバーしつつ、良い連携ができているのではないかと思う。ちなみに日本には中国のテック企業も進出しているが、私は中国のテック企業の公共政策チームと連携するメリットを感じることはなかったので、その経験はない。

それぞれの国の環境に合わせて組織運営

最後に、米国テック企業の公共政策チームと一口に言っても、同じ行動パターンを取る訳ではないことも付言しておきたい。幸い、アマゾンはリアルな物品を取り扱うリテールビジネスやマーケットプレイスを主たる事業としているので、ビジネス上の商談もロビイング活動も進出しているそれぞれの国の政治・経済・社会環境に合わせた行動ができるような組織運営がされている。

公共政策チームで言えば、日本の法制度や政策立案過程に精通した専門家が日本法人の関係部署と相談しながら行動していく。

もちろん、米国本社からの大きなガイダンスを仰ぎ、他国の公共政策チームの同僚と連携することもあるが、米国本社がマイクロマネジメントをする訳ではないし、ましてやアジア太平洋地域(APAC)における地域本部は存在していなかった。

ただ、米国テック企業の中には、ロビイングの一挙手一投足に米国本社やAPAC地域本部からの介入が生じる企業もある。

このような場合には、あいにく日本法人の公共政策チームには委任された権限が少なく、米国本社やAPAC地域本部と日本の政策立案者との間の伝書鳩のような役割に徹することにもなる。

「ハイレベル面談こそ最良の解決策」という妄信

米国本社やAPAC地域本部の幹部がわざわざ来日して直接意見陳述したとしても、日本の政策立案者が何を求めているのかを”読む力”に乏しいので、その意見が関係者に響かないままになってしまうこともある。

また、米国本社やAPAC地域本部の幹部は、日本の政策立案プロセスを熟知していないため、首相や大臣などのハイレベルの面談にむやみに拘泥することもしばしば起こる。

最近の例で言えば、生成AIやWeb3.0のように与党が大きな政策の方向性を霞が関に先んじてリードしている分野であれば、閣僚や与党幹部に面会を申し入れることは一定の意義があると思うが、そうでない分野についてトップ外交を申し入れても日本の場合はあまり意味がない。

にもかかわらず、外資系企業の中には、日本を一部のアジア諸国と同様にとらえて、ハイレベルな面会こそが最良の解決策であると妄信している本社や地域本部の幹部もいる。

渡辺 弘美 :元アマゾンジャパン合同会社顧問・渉外本部長

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