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JR旅客6社&貨物の「新規事業担当者会議」に潜入 鉄道に匹敵する「新たな事業柱」を育成できるか

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 6時30分

このあと、おおい町の施設に移動して同町が行う産業振興の取り組みについての説明を受けた後、敦賀に戻って2日間の日程が終了した。

JR貨物、JR九州以外の会社の新規事業の取り組みについても確認しておきたい。その動きがとりわけ目立つのがJR東日本である。駅ナカを中心としたシェアオフィス事業「STATION WORK(ステーションワーク)」は東日本エリアを飛び出し全国で展開中。無人決済店舗「TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー)」はファミリーマートをはじめとして小売店などでの導入事例が続々と増えている。新幹線を使った荷物輸送の取り組みも新規事業の1つといえる。

JR東海はこれまで東海道新幹線の高い収益性に支えられ、新規事業の開拓に乗り出す必然性は乏しかった。しかし、コロナ禍で新幹線の利用が激減するという異常事態が同社の危機感を強めた。2023年4月に前社長から経営のバトンを託された丹羽俊介社長は、「社員にはアイデアがあり挑戦の意欲もある。自由に考えて、闊達に議論して、それをやり抜いてほしい」と話し、新規事業の開発に力を入れる。

これまでに新幹線の貸し切り車両パッケージ、新幹線車両のアルミ素材を活用した金属バットの開発、豊橋駅での法人向けEVカーシェアといったユニークなビジネスが続々と登場している。新幹線と絡んだビジネスが多いが、新幹線と切り離して考えれば、さらにユニークな事業が生まれるかもしれない。

JR西日本も新規事業に力を入れる1社。魚の陸上養殖は「お嬢サバ」「白雪ひらめ」など駄洒落のようなネーミングも相まって人気を博している。新幹線の列車運行制御や運行情報の伝達などに用いるため線路沿いに敷設された光ファイバーケーブルを外部の事業者に貸し出すという取り組みも行っている。さらに、他事業者向けに鉄道車両のリニューアル工事を行う専門の技術営業部隊を昨年11月に立ち上げた。鉄道車両のリニューアル工事は近江鉄道やあいの風とやま鉄道向けに行ってきた事例があるが、それを持続的に行うべく本社に営業部隊を設けたという点が興味深い。

JR北海道、JR四国も奮闘中

非上場組では、JR北海道の子会社であるJR北海道フレッシュキヨスクが地下鉄南北線すすきの駅に直結する商業施設を1月31日に開業、JR駅から飛び出す営業展開を始める。JR四国は「新時代」創造プロジェクトとして、既存の鉄道事業とは関連しない新規事業を社内外から募り、約1000件の応募を集めた。この中から採択されたペット用のお土産は昨年11月から高松駅と高知駅で販売がスタート。犬猫用のさぬきうどんやスモークかつおなど、話題性も豊富だ。

新規事業は難しい。ある金融機関系ベンチャーキャピタルの担当者によれば、「20の案件に投資して、1件がモノになれば大成功」という。経営体力の乏しい会社が新規事業に踏み出すのはリスクが大きいかもしれない。しかし、JRレベルの企業規模なら可能だろう、上場組と比べると経営体力で劣るJR北海道やJR四国であっても、撤退の判断さえ間違えなければ、失敗してもリスクは限定的だ。長期的に見れば鉄道や不動産に匹敵する新たな事業の柱が生まれるかもしれない。企業の持続的成長のためにも新規事業へのチャレンジは不可欠だ。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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