1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

マウンティングには敗北しかない確率論的理由 虚勢によって尊敬を得ることは不可能に近い

東洋経済オンライン / 2024年1月30日 15時0分

(写真:Graphs/PIXTA)

人生にもたらされ続ける不条理と不合理を解消するにはどうすればいいのでしょうか。それには「企業のお金儲け」にとどまらない、人類のさまざまな側面に関わる本来の経営概念に立ち返る必要があります。本稿は、『世界は経営でできている』より一部抜粋・再構成のうえ、「虚栄」について、経営的視点で考察します。

人間に虚勢行動は必要なのか?

動物学的にみれば虚勢行動は「力関係が定まっていない間柄において、上下関係の形成を通じて摂食と生殖の優先順位を明確化する」機能を持つ。すなわち限られたエサをめぐって争い合う野生のサルの本能が、こうした機能を求めるのだ。

ここで一度立ち止まる必要がある。人間は今や原人の時代を脱した。技術の進歩のおかげで今や必要最低限を大幅に上回るエサを生産できる。さらにマッチングアプリ等の登場で繁殖行動さえお手軽になってしまったのは周知のとおりだ。

そのため本来ならば、人間にとっての虚勢の機能的役割はサルにとってのそれよりも小さくなっていくはずだ。スイーツカフェでの虚勢合戦にしても、なにも三段ケーキスタンドに所狭しとばかりに並べられたエサをより多く捕食するために、野猿がよくやるように歯をむき出しにして威嚇しあっているわけでもないだろう。

だとすれば野生感覚での虚勢はいまではほとんど意味も持たないはずであり、これを追い求めるのは愚の骨頂だと気付ける。これもひとつの経営である。

だがここで次のような反論がありうる。

それは「人間にとっては虚勢の機能的役割ではなく、情緒的役割がより重要な意味を持っている」という反論だ。すなわち自らが相手の上位に立つこと、尊敬を勝ち取ることそのものが、虚勢を張る人々にとっての満足につながるのだという意見もあるだろう。

しかしここにも落とし穴がある。虚勢を張って相手からの尊敬を勝ち得ようとしても、虚勢自体が尊敬の土台となる友情を壊して、結果的に尊敬は得られないという陥穽・トラップだ。製品の強度を確かめるために金槌で叩いて壊してしまうようなものだ。

多くの場合、虚勢が「相手からの尊敬を得る」という目的を実現させることはない。それどころか往々にして虚勢を張った側が劣等感を抱いてしまうようになる。

大いなる誤算

たとえば「大型家具を買って搬入に苦労したエピソード」や「夜景の見える自宅でビアガーデンごっこをすることで節約したエピソード」を披露することで、さりげなくタワーマンションの高層階に住んでいることを匂わせるような人がいる。しかしそうした人は虚勢合戦に必ずいつか敗北することが宿命づけられている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください