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トヨタ「プリウス」発売1年、求めた姿との乖離 運転したときの強烈な違和感に是非を問いたい

東洋経済オンライン / 2024年1月30日 12時10分

先駆けとしての価値の創造は、この3代目で一つの区切りがついたといえる。

4代目は、外観を斬新にする見栄えが強調され、先駆けとしての意味を失いはじめた。しいて新しさをあげれば、HVの車載バッテリーに、従来のニッケル水素とあわせてリチウムイオンを選べるようにしたことである。

新型プリウスにある違和感

そして迎えたのが、新型の5代目だ。

新型プリウスを実際に目にして驚いたのは、まさにスポーツカーかと思わせるほど、乗り手を選ぶような外観だった。はた目に格好いいと思えても、果たして運転免許を取得して間もない人や、高齢者、あるいは必要に迫られ運転する人にとって、扱いやすく身近な存在になるのだろうかとの疑問がわいた。

案の定、運転席に座ると、窮屈な空間に圧迫感を覚えた。フロントウィンドウの支柱が、自分の顔に向かって迫りきて、圧倒される。そして右斜め前方の視界が制約を受けた。左斜め前方の視界も、フロントサイドウィンドウがせり上がり、フロントウィンドウ左端の下側に丸みがあることによって、車幅がつかみにくく、道路左側のガードレールとの間合いをつかみにくい。

ルームミラーを見ると、リアウィンドウが小さく感じ、なおかつ、2代目から4代目まで後方視界を補助する小窓がリアウィンドウ下に設けられていたが、新型では廃止され、外観の見栄えが優先されている。

車体寸法自体は、前型とほとんど変わらないが、より大柄なクルマを運転するかのような不安をもたらした。車両感覚がわかりにくいためだ。

運転すると、その杞憂は走行中ずっと不安感をもたらし、方向転換しようとした際の後方の安全確認はもちろん、後退しながら路地へクルマを差し入れるときのガードレールの端の見極めもできない。後退時には、カーナビゲーション画面に車両の周辺状況を見せる映像が表示されるとはいえ、映像と、実際の障害物との距離のゆとりがどれほどであるかを把握しにくい。実際、路地の先にある電柱に危うく車体をぶつけてしまいかねないことも経験し、冷や汗をかいた。

PHVあらためPHEVは、モーター駆動による走行距離が延ばされ、電気自動車(EV)と同様の走りをより味わえるようになった。そこは将来的なEVヘの乗り換えなどを視野に新しい感触を味わえる。しかしHVは、基本的に初代から続く乗り味に変わりなく、新鮮味は薄い。先駆けとしての先見性や新鮮味は、もはやHVでは味わいにくい。

これまでのプリウスは、多くの消費者が乗る機会を与えられるHVとして人々に愛されてきたのではないか。だが、新型は、運転する人を選び、量産市販車としての安心と安全をもたらす基準を満たしていないと私は考える。

愛車の本質意味を問いたい

愛車を目指したと開発陣は語る。だが、愛車とは、頼れる相棒であり、格好がよければ愛車になるわけではないと言いたい。カローラでもヤリスでも、扱いやすく頼りがいがあれば、愛車になるのだ。そこに格好よさが加われば、愛情は倍増する。

いくら電子制御で安全性能を高めても、日々利用するクルマとして基本的安心感を覚えられなければ、もはや特殊な車種でしかなく、それは冒頭にも述べたようなスポーツカーやスペシャリティカーといった存在でなら許されることだ。

プリウスの販売は、決して悪いわけではない。しかし、前型のマイナーチェンジ後に示された、幅広い消費者が待ち望んだ存在ではもはやなくなったと思わざるを得ない。

御堀 直嗣:モータージャーナリスト

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