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岡山の廃線「片上鉄道」代替バスは別ルートの事情 貨物の流れから人の流れへ交通路が再編された

東洋経済オンライン / 2024年1月31日 6時30分

現在、和気からバスで直通できるのも周匝まで。ここから終点の柵原まで行こうと思えば、旧柵原町営バスの流れを汲む津山・柵原・吉井線共同バス「柵原星のふる里バス」が吉井支所まで乗り入れてきているが、柵原方面行きは朝6時40分発の1便しかない。

そこで少し回り道になるが、赤磐市広域路線バスの赤磐・美作線にまず乗り継ぐ。これは赤磐市中心部から美咲町、美作市を通って、湯郷温泉経由JR姫新線の林野駅前までを結ぶ、こちらも文字通りの広域バスだ。

面白いのは、岡山市の表町バスセンター、岡山駅前から、やはり林野駅前まで走っている宇野バス2往復とは共同運行の形を取っていること。料金も共通で時刻表にも一緒に掲載されている。民間バスの一部の便(4往復分)を代替しているのだ。

今回は周匝8時39分発の林野駅前行きに乗り継ぎ、3分ほど乗った美咲町内の高下(こおげ)で150円払ってすぐ降りる。宇野バスと共通の区間制なので、整理券を取って乗るところが珍しい。高下までは、津山からの中鉄北部バスがやってくる。このあたりは、岡山市より津山市の方が最寄りの都市になるのだ。

中鉄北部バスの高下バス停は赤磐市広域路線バスとは別の場所で、探すのに手間取ったが、接続はよく、8時58分発の津山駅経由スポーツセンター行きに乗り継げた。これに乗ると、柵原鉱山の入口で片上鉄道でもっとも大きな駅だった吉ヶ原へ行ける。

沿線北部の需要は津山市へ向く

吉ヶ原9時14分着。ここには駅舎や車両、構内の線路が保存され、柵原ふれあい鉱山公園となった。駅舎は、そのまま中鉄北部バスの待合室として利用されている。掲げられたままの広告は津山市内のもの。地域的なつながりがどちらへ向いていたかがわかる。片上鉄道も廃止前は「津山へつながっていれば」とも言われたものだ。

吉ヶ原から終点の柵原までは1.3km。旧柵原町は久米郡の町で、中央町、旭町と2005年に合併して美咲町となった。久米郡はJR津山線沿線にまで東西に広がる地域で、やはり津山への指向が強いところだ。律令国では美作国で、備前国に属する赤磐市や和気町との文化的、経済的つながりはもともと薄かったと思われる。

それでも市町境が錯綜しているため、美咲町は周辺地域の利便も図って、赤磐市、津山市と共同で、津山駅前―柵原病院前間3.5往復のバスを走らせている。そのうち一部が赤磐市吉井支所まで直通しているのだ。ただ、片上鉄道を代替するような役割ではない。

地理的な条件もあろうけど、市町村営バスは自治体のエリア内だけを相手にしている例を各地で見てきただけに、住民サービス重視の姿勢が、ここでは強く感じられた。美咲町は合併した3町間を結ぶ町営バスも運行している。

寂れた感じがしない終点

吉ヶ原から柵原病院前までは、適当なバスの便がないので歩いて観察。鉱山従業員の社宅が今も残る風景を眺める。完全に人が去ってしまった北海道や九州の炭鉱とは違い、まだ現在も同和鉱業系の事業所が柵原駅跡の周囲で操業している。人口は残っており、寂れた感じはしない。

柵原病院前のバス停は、中鉄北部バスが病院前の幹線道路。柵原星のふる里バスと美作市営バスが病院の裏と分かれており、いずれも病院敷地内には乗り入れていない。柵原駅を名乗る柵原星のふる里バスのバス停もあるが、今はもう鉄道の痕跡はない。

土屋 武之:鉄道ジャーナリスト

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