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名古屋の建設会社が「低家賃物件」を扱う強い覚悟 2代目社長が母子世帯への住宅支援で描く先

東洋経済オンライン / 2024年2月2日 13時0分

住宅探しに苦しんできたシングルマザーの中には「こんな物件に住めるなんて」と感じることで尊厳を取り戻していく人もいるという(提供:LivEQuality)

ゴルフと接待まみれだった地方の建設会社の後継ぎが、コロナを機にシングルマザーの住宅支援に立ち上がった。日本のシングルマザー世帯の相対的貧困率は先進国で最低レベル。その解決策として彼が取り組んだのは?

【名古屋市内の取得物件】総戸数の半分近くにシングルマザー家庭が入居している

「2018年、父が急逝したのを機に建設会社を継ぎました」

そう語るのは、名古屋市にある千年(ちとせ)建設社長の岡本拓也さん。学生時代はバックパッカーとして旅をする中で、ソーシャルビジネスを世界に広めたグラミン銀行に出会った。小規模融資で貧困層の自立支援を行う世界観に感銘を受けた岡本さんは、大学卒業後に公認会計士となってビジネスの経験を積んだ後、NPOセクターの経営に飛び込んだ。

名古屋市内に約100戸を所有

しかし39歳のときに父の後を継いで、地方の建設会社の社長に転身すると生活は一変した。工場の修繕や建築などを得意とし、メーカーや製造業の顧客が多い会社のトップとなれば、これまでの働き方とは勝手が違う。岡本さんはこう続ける。

「郷に入っては郷に従えと、ゴルフや接待を始めました。しかしコロナ禍になると非正規雇用の方々が仕事や住まいを失い、特にシングルマザー家庭に“居住貧困”という問題があることに気づきました」

そして「こういうときだからこそ、何かをやりたい」と自分自身の原点に立ち返り、住宅支援を始めようと決意したという。

今では千年建設を通して名古屋市内に約100戸を所有し、市場よりも低い家賃でシングルマザー家庭に住まいを提供している。「中部圏のマンション価格はこの13年で約1.9倍。富裕層は資産を増やすため高く貸したい一方、シングルマザー家庭はもはや家を借りられない」(岡本さん)。

筆者が取材に訪れたマンションは一棟丸ごと千年建設が買い取り、現在は総戸数の半分近くにシングルマザー家庭が入居している。築40年近い建物だが市の中心部にあって駅や教育施設、スーパーなどのアクセスがよく、子育てと仕事が両立しやすい立地だ。

岡本さんは「普通の大家さんの場合は『いくらまで高く貸せるのか』と家賃を計算しますが、われわれは常に『どこまで安くできるか』を考えて価格を設定します」と語る。

さらに生活困窮者の状況に合わせて、契約条件を柔軟にしているという。安心安全な住まいを低価格で提供することで「母子が尊厳を取り戻し、次に進む一歩を踏み出せる」と強調する。

国の支援はハードルが高い

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