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戦時でも「ダイヤどおり運行」ウクライナ鉄道の今 周辺諸国との重要な足、ウィーン直通の客車も

東洋経済オンライン / 2024年2月2日 6時30分

年末年始もロシアはウクライナ各地に300発近いミサイルと200機以上のドローン(無人機)による大規模攻撃を展開した。キーウも被害を受けたが、原氏は「パトリオット防空システムなど、西側諸国から導入されたシステムによってキーウが十分に保護されていると市民は確信しているように見える」という。

キーウを走る地下鉄は全面的に防空壕と化したことがあったが、現在は市民の足として復活しており、防空警報が出ても途切れることなく運行。原氏は「地下鉄駅にいるとスマートフォンを通じて地上の様子をチェックする人も多い」と実体験を語る。

ウクライナは戦時下にあるため、民間航空機を国土の上空に飛ばすことができない。そこで、ウクライナ国鉄(UZ)は積極的に近隣諸国(敵国であるロシア、ベラルーシを除く)との国際鉄道網の復興に努めており、2ルートあるキーウとポーランドの間をはじめ、ハンガリー経由でオーストリアへの直通列車も運行されるようになった。

周辺国からキーウや西部の主要都市であるリビウ(Lviv)へ向かう人々が多い中、ウクライナへの鉄道アクセスのハブとなっているのは、開戦当時から一貫してポーランド東部のプシェミシル(Przemysl)だ。ここからキーウへ向かう鉄道ルートは、岸田首相が2023年3月にキーウを電撃訪問した際も使われた。「王道ルート」のプシェミシル経由だが、列車の本数が比較的多いにもかかわらず切符は早めに売り切れてしまうといい、スロバキアとハンガリーと接するチョープ(Chop)経由で出入りするルートも使われている。

定刻通り走るキーウ行き長距離列車

筆者は2022年の開戦後ほどなくしてプシェミシルを訪れたが、当時は国際列車の本数も少なく、ウクライナから着の身着のまま逃げてきた多数の人々で混乱していた。今ではむしろ、ポーランドからウクライナへ戻る人々の需要が増えており、プシェミシルからはキーウだけでなく、南部の黒海沿岸の街オデーサや、ロシア国境に近い北東部ハルキウ方面への直通列車も運行されている。

プシェミシルを午後2時前に出発する列車はキーウまで16時間弱かけて走る。一時は空爆の影響で鉄道のダイヤが乱れることもあったが、最近では意外なほど正確に運行されており、原氏が乗った列車はダイヤ通り運行し、キーウへは定刻通り翌朝5時1分に到着したという。戦時下の首都へ行く緊張とは裏腹に、プシェミシルで乗り込んだUZの青い車両は「ふわふわした台車とスチーム暖房が心地よく、短いレールの継ぎ目のリズムとともにとてもよく眠れた」と話してくれた。

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