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プレゼンに「流行りネタ」を入れるとスベる理由 ボケたがりな人が知っておくべき科学的知見

東洋経済オンライン / 2024年2月3日 8時0分

これを、言語学の世界では「意味と意図のズレ」という。人間は、その長い歴史の中で言葉遊びを覚え、ほんとうに意図することとは異なる意味を言葉に込め、その文脈を共有できることを文化や教養、あるいは娯楽として享受するのである。

たとえば同じ問題を、アメリカ人、中国人、ドイツ人に出したとして、正解を当てられるかはかなり危うくなる。文脈を、共有できていないからだ。

そう、ある言葉の「正しい意図」(話し手が本当に込めているメッセージ)が伝わるのは、話し手と聞き手が同じ文脈を共有できているときに限られるのである。

果たして何人が「倍返し」を理解できるか

皆さんが会議の場で唐突に「倍返しだ!」と叫んだとする。最高視聴率30%を超えた近年の大ヒットドラマだ。さあ、何が起こるだろうか。

皆さんはここで気づくべきなのだ。視聴率が仮に30%あったとしても、それはつまり、これがネタだと理解しているひとはせいぜい30%やそこらしかいないということなのだ、ということを。その他大勢にとっては、あなたが決然たる意志をもって「倍返し」を宣言したようにしか見えていないのである。

「いつやるの?」と聞き手に問いかけて、「今でしょ!」と返事してもらえることを期待してはいけない。「なぁぜなぁぜ」と問いかけても、それが流行の若者言葉だと理解している人はごくまれで、大半の人はおちょくられているとしか感じない。「wwww」とか「草」と表現して、それが笑いを表現しているとも一般の人は知らないのだ。

プレゼンは、最大多数の人に、ただしく情報を伝達し、その心をも動かすことを狙いとして行うものである。1対1ならいざ知らず、プレゼンの場面で、理解できる人を選ぶ言葉を使うのは、あってはならないのである。

使う言葉が、あなたの社会的地位を決める

さらに言えば、皆さんはその使った言葉によって自らの社会的地位を決めてしまっている、ということも知っておかなければならない。

・ワシはまだまだ元気じゃよ。
・お紅茶をお飲みになれば宜しいんじゃなくて?
・フッ、笑止な。貴様、どこから来た?

皆さんは上記の3つの文章をみて、それぞれ、どんな人物が話しているのか、イメージできるだろうか? 最初の「ワシは~」は、おじいさん。「お紅茶」はお嬢様。「フッ、笑止な」は、少年漫画に出てくるような筋骨隆々の戦士を、イメージしたはずである。

これは言語学の世界で「役割語」と呼ばれる、大変重要な発見である。同じことを意味する言葉は無数にあるなかで、物語の書き手は固有の言語セットを用いて、そのキャラクター像を特定する。実際の老人は「ワシ」などとは言わない。だが、「ワシ」という言葉を使うことで、書き手も読者もこの人物が老人であると認識するのである。

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