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苦境のコーセー「雪肌精」、社長肝煎り大刷新の成算 看板ブランドで「羽生&大谷」起用の深いワケ

東洋経済オンライン / 2024年2月3日 7時30分

同じく化粧品最大手の資生堂も、主力の中価格帯スキンケア「エリクシール」で低価格化の波に巻き込まれている。昨年5月の決算説明会で資生堂の横田貴之CFO(最高財務責任者)が「(日本の)低価格帯市場は、当社の想定以上に強く伸長している」と語るほど、ドラッグストアのスキンケア市場をめぐる勢力図は激変している。

逆風の中で繰り出すコーセーの挽回策が、看板ブランドの1つである雪肌精クラシックシリーズのリニューアルというわけだ。

原点であり主力商品でもあるクラシックシリーズの処方には先代社長のこだわりが詰まっており、これまで手を付けてこなかった。

しかし今回、10年以上研究を続けてきた「甘草」由来の成分が、シミやそばかすを防ぐ美白有効成分として承認されたことがリニューアルの決め手になった。すでに承認されていた「肌あれ予防」に加えて、新たに「美白」を前面にアピールしたマーケティングが可能となる。謳い文句は「新しい美白のカタチ、はじまる」だ。

小林社長は「この成分が雪肌精の歴史を変えるのではないかと楽しみにしてきた。同じ価格帯の競合商品がわかりやすい有効成分を訴求し、支持されているので、われわれもそこに手を付けたいと考えた」と力を込める。商品化までに16年をかけた、まさに肝煎り商品となっている。

社内の士気が下がっていた

雪肌精を担当するクリーンブランド事業室のブランドマネジャー、塩島瞳氏は「雪肌精ブランドについて、社内の士気が下がってしまっていた。しかし今後は、自分たちがコーセーを代表する看板商品を取り扱っているのだ、という思いを掲げて取り組んでいく」と意気込む。

これまで小林社長の旗振りの下、雪肌精には豪華なプロモーションが展開されてきた。「(2007年の)社長就任以降、雪肌精はコーセーの顔になるブランドだと考え、大胆なマーケティングをするべきだと言い続けてきた」(小林社長)。

2019年には羽生結弦選手をアンバサダーとして起用。2023年からは大谷翔平選手の「大谷vs太陽」キャンペーンを打ち出し、雪肌精のUVケア商品を拡販してきた。

コーセーの高価格帯スキンケアブランド「コスメデコルテ」の広告にも起用している大谷翔平選手は、小林社長自ら口説き落とした経緯がある。

遡ること1年前、2022年度の決算会見で小林社長は「野球をする人の肌を守る習慣を一緒に作らないかと交渉し、(大谷選手に)共感してもらえた。私自身がコミットして実現したことなので、かなり期待している」と語っていた。社員からは韓国アイドルの起用を望む声が大きかったが、社長の強い思いで大谷選手の起用が決まった。

羽生選手のCMではジェンダーレスを訴求

ブランドのポジショニングも工夫してきた。現在、若年層を中心に男性の化粧品使用率が増加しており、競合は次々に男性用化粧品を打ち出している。しかし「雪肌精 for Menなど男性用商品が何度も企画に上がってきたが、私はすべて否定してきた。男性しかダメと言ってしまっては、こちらからターゲットを狭めてしまう」と小林社長はこだわる。

たとえば羽生結弦選手が登場するCMでは「雪肌精に男性用はありません」と、性別の垣根なく使えるジェンダーレスブランドであることをアピールしてきた。こうした華々しいプロモーションが奏功し、男性を含めた若年層にも雪肌精の認知度は広がっている。

低価格帯スキンケアの台頭で、消費者の価格と価値のバランスを見る目は一層シビアになっている。中価格帯スキンケアに漂う暗雲を、雪肌精は払拭できるのか。発売40周年を迎える看板ブランドが勝負をかける。

伊藤 退助:東洋経済 記者

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