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中国人向けの書店が東京で続々開業する深い事情 言論統制を嫌うインテリが日本に脱出している

東洋経済オンライン / 2024年2月3日 11時50分

最近中国人知識人が日本に相次いで移住してきている現象については、辛亥革命(1911年)の前後、1895年〜1920年代半ばごろの状況と似ているところもあるとみる。

当時、魯迅、梁啓超、孫文といった進歩派の中国人の文学者、思想家が日本に滞在していた。混沌とした清末〜中華民国初期にあって、彼らは日本で貪欲に西洋思想を身につけた。東京では、清朝打倒を目的とする中国同盟会が設立され、横浜では「清議報」や「新民叢報」といった雑誌や新聞が誕生した。

日本側も中国の動向に関心を持ち、政界では犬養毅が、民間では宮崎滔天や梅屋庄吉といった人々が反体制派の中国人を側面支援した。

賈氏は、日本で中国人知識人が増加していることから、今後は中国の教材を使わない中国人学校、中国政府の影響を排した中国系メディアアプリ、中国系出版社などが日本に登場する可能性があると予測する。

実際に、中国で20年以上出版業界で働いた経験があり、「潤」してきたばかりの張適之氏は2023年12月に自ら起こした「読道社」から簡体字の本を2冊出版した。「中国人知識人が東京に集合するようになったと感じたことが出版のきっかけになった」と話す。

さらに特筆すべきことに、東京では中華系書店の本格進出が目立つようになってきた。しかも、それぞれイベントの開催に力を注いでおり、コミュニティの形成が着実に進んでいる。

中国国内で独立書店チェーン「単向街書店」を運営する許知遠氏が、その仕掛け人の一人だ。中国を代表する知識人で、故・坂本龍一氏をはじめとする世界のオピニオンリーダーと対話してきたことで知られる。長身で7頭身はありそうな、芸能人のような風貌の人物だ。

許氏らは、2023年8月に東京・銀座に初の海外店をオープンした。独立書店とは大手チェーンに属さない特色のある書店で、オーナーの独自色が打ち出されている。

ここでは、主に中国で出版された書籍を扱い、日本語や英語の本も販売している。日本人が普通イメージする個人書店とは違って、外見や内装はとにかくオシャレ。エントランスの縦に長い自動ドアと螺旋階段、そして吹き抜けが開放感を演出する。

カフェ機能も備えるほか、2階では思想家や作家を呼んで毎週のようにイベントが開かれている。中国でよくみられる独立書店そのものだ。最近は、書籍購入やイベントの際に割引が受けられる会員制も導入した。

店内でインタビューに応じた許さんに問うてみた。「どうしてあなたを含めた中国人知識人はこんなにも日本に注目するんですか?」。

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