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中国人向けの書店が東京で続々開業する深い事情 言論統制を嫌うインテリが日本に脱出している

東洋経済オンライン / 2024年2月3日 11時50分

「今でも日本が鏡だからです」と許さんは回答する。「清朝末期、日本は大国でした。(当時、ロシアに戦争で勝利するなど)日本は西洋にインパクトを与えました。日中両国には似たところも似てないところもあります。さらに20世紀には日中間で大きな戦争も起きました」。

日本の近代は避けて通れない

中国の問題を考えるとき、日本の近代は避けて通れない、というのが中国人知識人の共通認識だ。

日本にやってきた中国人知識人はどのような暮らしをしているのか? 多くは目立たないように過ごしている。親戚がまだ中国にいる、もしくは本人がまだ時々中国に帰国するような場合は、より一層慎重な言動に努めている。

去年から都内のURで暮らし始めたばかりのある中国人ジャーナリストは「東京に来た知識人には、靖国神社を訪ねる人が多いです」と明かす。靖国神社は中国では徹底的に否定されている存在なので、実際にどんなところなのか見てみたいとの好奇心がわくのだそうだ。

前出の張氏は、先日、江戸末期にアメリカに開港を迫られた静岡県下田市まで車で行ったと話していた。こちらは、中国の近代化がなぜ日本の明治維新のようにスムーズに行かなかったのかという疑問から出発している。

単向街書店銀座店について、許氏は文化交流の場になってほしいと言う。日中だけでなく、韓国やタイ、フィリピンなどを含めた「アジアの書店」にする目標を掲げる。「政治ももちろん非常に重要ですが、表面的でもあります。文化は非常に深くて、長期的に影響を及ぼします」。

1970年代生まれの許氏が中国における環境の変化を説明する。「中国では2000年以降の経済成長に伴って知識分子が影響力を失いました。ここ10年はスターを中心とするエンタメの興隆もあり、知識分子の存在がさらに周縁に追いやられました」。

許氏ははっきり語らないが、中国では過去10年で当局によるコントロールによって言論空間がグッと縮まり、社会問題を真剣に議論するような雰囲気は雲散霧消した。

国際ランキングでの躍進とは裏腹に、許氏の目には、教育システムの硬直化により、中国の大学の質は悪化していると映る。その中で独立書店が提供する空間は実はますます重要になってきているとの見方だ。銀座店でも、日本などで良好な教育を受けた若い在日中国人が来るようになると期待を寄せる。

東京に「知識人」が集まってきている証左

それだけにとどまらず、2023年12月には中国人社会活動家の趙国君氏が神保町に「アウトサイダー中文館(中国名は「局外人書店」)」をオープンした。中国語の絵本を取り扱うほか、店内で自由に本を閲覧でき、会員になると本を借りることもできるのが特徴だ。

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