総務省初の"出戻り官僚"が誕生、霞が関の危機感 キャリアの退職相次ぎ、人事改革に試行錯誤
東洋経済オンライン / 2024年2月5日 8時0分
人事を担当する総務省秘書課の柴山佳徳官房参事官は、管理職の経験者向けの選考採用試験を実施した理由について、「今までの硬い年功序列から社会が流動化する中で、役人が追いついていない部分をキャッチアップし、人事改革を進めないといけないと考えた。人事の平等性を考えながらも、組織力アップに向けて試行錯誤しなければいけない時代になっている」と説明する。
IT・コンサルへの転職も目立つ総務省
人材流動化の波は、総務省にとってもひとごとではない。とりわけ通信や放送を所管する旧郵政省系の官僚は、アメリカのビッグテックなどをはじめとするIT業界や、コンサル業界への転職が目立つとされる。
2021年には総務省幹部の接待問題が国会で取り上げられ、30人超の職員が処分された。組織が大混乱に陥る中で、「直後に多くの職員が一気に離職」(総務省関係者)する動きもあった。
組織からすれば、キャリア官僚が中堅を前に退職することがとくに痛手となる。人事院の担当者は次のように打ち明ける。
「今も職員を新卒で採用し、仕事を通じて育てるのが霞が関の主流なやり方だ。政策の企画・立案を担う総合職が10年ほど経験を積み、これからいよいよ、という時に辞められると厳しい。中核になる年次が少なくなるので、新人を増やせばいいというわけでもない。行政が複雑化してさまざまな新しい課題が出てくる中で、何年か後まで待てない状況もある」
職員の流出が相次ぐ状況下で、民間人材の経験者採用も当然進めている。ただ国の仕事は、予算・法律づくりに国会対応、政治家への根回しといった“特殊性”がつきものだ。「公務員特有の作法、仕事の進め方がある。各省とも、研修などを充実させないと外から来る人は定着しづらい」(人事院の担当者)。
その点、平松室長のように役人としての蓄積があり、官民の違いもわかる管理職は貴重な存在ともいえる。総務省の柴山官房参事官は「役所では、経験や知識が重要。細かい知識や制度はすぐに覚えられないので、即戦力としてのプレミアがある。民間の知恵も還元してほしい」と期待する。
もっとも、初めてとなる採用の試みなだけに、待遇面は手探りだ。2000年に入省した平松室長の同期の多くは今、課長となっている。しかし出戻り第1号の平松室長は、課長よりも格下に当たる室長級での再スタートとなった。
本人は「戻ってきて急にみんなと同じだと目立って嫌だから、課長では戻りたくなかった」と納得感を示すが、復帰後の待遇のあり方は、出戻りを検討する人たちにとって重要な判断材料の1つとなる。退職者が戻りやすい体制を作るには、民間での勤務経験が評価されるような人事制度の検討も課題となりそうだ。
10人に1人のキャリア官僚が5年未満で退職
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