「社民・福島党首訪中」に見る中国の隠された狙い 「中国は愚か」と侮った時点で術中にはまっている
東洋経済オンライン / 2024年2月6日 8時30分
社民党の福島瑞穂党首が1月18日から20日にかけて中国を訪問、中国人民抗日戦争記念館を見学し、「社民党は憲法改正に反対であり、憲法の精神を貫徹するために全力で努力する」と述べた。中国共産党序列4位の王滬寧(おう・こねい)政治局常務委員とも会談し、福島第一原発の処理水放出に反対することで一致した。
王滬寧氏は、“法宝=魔法の武器”と呼ばれ、「主要敵を内部分裂させたり、友好勢力を増やそうとする策略『統一戦線工作』(防衛省:NIDSコメンタリー 第288号より)」を主導していると目される人物であり、その危険性を指摘する声が上がっている。
そもそも、統一戦線工作とは、主として好意的な親中派を拡大させるプロパガンダ工作であるとされ、中国へのネガティブな論調を抑え込むこともその目的に入る。
その工作対象は、主に華僑、海外の友好人士で、目的を達成するために日本に基盤を持つ多くの組織・友好団体を利用し、政財界のエリート層を親中派にさせる試みも行っている。
本稿では、これら状況も踏まえ、福島党首訪中における中国の狙いについて考察していく(福島党首の政治信条・理念を否定するものではないことをことわっておく)。
中国の隠された狙いとは?
素直に受け取るならば、王滬寧氏は世界中の友党との関係構築も担っており、その一環で会談したに過ぎないと見ることもできる。しかし、ここでは中国側の真の意図を考察したい。
今回の訪中を受けて「影響力が衰え、弱体化が進む社民党の党首をなぜ中国はプロバガンダまがいに利用するのか」「中国は愚かだ」といった声が多く聞かれる。
しかし、中国が“狙い”をもって動いていることに疑いの余地はなく、決して「中国は愚かだ」などと侮ってはいけない。侮った時点で中国の思惑の1つを達成させることになるだろう。
また、小さい政党とはいえ、日本の党首の行動や発言について、日中以外の第3国からどう見えるだろうか。 “日本の政党のトップ”という肩書は小さくない。
まず、国内の報道では、どうも今回の訪中における重要キーワードが「処理水」になってしまっている。中国の立場からすれば、「処理水放出反対」といったトピックは重要ではない。むしろ、中国の目論見はほぼ失敗に終わっており、振り上げた拳を下ろす先を探している状態だ。
現に、今回の訪中について中国メディアの人民網や新華網では、福島原発処理水に関する発言を取り上げた報道は見られず、日中平和友好や“4つの政治文書”の確認といった内容が中心であった。日本のメディアとしても、会談における処理水発言を大きく取り上げてしまえば、ある意味中国の宣伝工作に加担していることになるが、中国としてはむしろ“触れてほしくない”状況だろう。
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