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「原油価格は今後も安定」と考えるのは甘すぎる 中東情勢が緊迫化しなくても原油の下値は堅い

東洋経済オンライン / 2024年2月7日 9時30分

フーシ派による無差別攻撃は、ハマスとイスラエルの戦闘に対して、初めて当事者以外が何らかの行動を起こした事例と言える。これでイスラエルだけでなく、同国以外に紛争のリスクが拡大したという点で、意味は決して小さくない。

もちろん、フーシ派は国家ではない。だが、背後にイランの支援があることを忘れてはならない。ここへきてアメリカは、英国と共同でフーシ派に対する軍事作戦を開始している。

もしアメリカを中心とした勢力がフーシ派の拠点を本格的に攻撃すれば、イランがそれを黙って見過ごすとは考えられない。もちろんイランにとっても、アメリカやイスラエルと直接的に対峙することは、かなりリスクの高い行動だ。

しかしながら、イスラム教シーア派の同胞でもあるフーシ派がアメリカなどの攻撃を受けているにもかかわらず、イラン政府が何も行動を起こさないでいるなら、「アメリカ憎し」という感情を持つ国民からの批判が強まるのは避けられない。

そうした批判をかわすためにも、今後は行動に打って出る可能性は高いと見る。実際イランは年明け早々から、紅海に軍艦を派遣する意向を示した。アメリカはイランとの戦争は望まないとしているが、将来的にイランとアメリカの軍艦が紅海上で対峙、双方が戦火を交えることがあっても不思議ではないと見ておくべきだろう。

現在、すでに多くの船舶が紅海からスエズ運河を通るルートを避け、南アフリカ経由という迂回ルートに変更しており、物流コストの大幅な上昇が懸念されている。石油輸出に関しても、サウジアラビア西部の輸出港やエジプトからの出荷に影響が出る可能性は高い。早期に問題が解決に向かわない限り、供給不安が強まる懸念がある。

そして、現在それ以上に懸念されているのが、イランがさらに態度を硬化させるか、イスラエルの方がイランに先制攻撃を仕掛けることによって、イランがペルシャ湾からアラビア海に抜ける出口にあたるホルムズ海峡を閉鎖するというシナリオだ。

一武装勢力であるフーシ派が船舶への攻撃を行っただけで、ここまで混乱が生じるのだから、もしイランが本気を出してホルムズ海峡を閉鎖しようとすれば、それはいとも簡単に行うことができそうだ。

国際物流を考えれば、スエズ運河に通じる紅海のほうが重要度は高いかもしれない。だが、こと石油需給に関してでは、その奥にサウジ東部やイラク南部、クウェート、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、カタールといったペルシャ湾岸の産油国の輸出港が存在するホルムズ海峡のほうが、影響がはるかに大きい。この地域から石油輸出が停止することがあれば、市場がパニックに陥るのは必至だ。そのときには原油先物価格も、1バレル=80ドル台どころか、100ドルの大台を大きく超えて急伸するのは避けられない。

情勢が一段と緊迫しなくても原油の下値は意外に堅い

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