「原油価格は今後も安定」と考えるのは甘すぎる 中東情勢が緊迫化しなくても原油の下値は堅い
東洋経済オンライン / 2024年2月7日 9時30分
もちろん、こうした強硬手段に打って出ることは、イランにとってもアメリカとの対立を深めるという点でリスクが高いのも間違いない。今後についても、これまで同様慎重な態度を維持する結果、情勢不安が高まらないことも十分にありうる。
ただそうした場合でも、昨年後半のような下落基調が再開する可能性はかなり低いと考える。この先、紅海やペルシャ湾で緊張が高まらなくとも、世界市場における需給の逼迫が、相場の大きな下支えとなるためだ。
まず、年初からは昨年11月末にOPECプラスが明らかにした、自主的な追加減産が実際に始まっている。もちろん、アンゴラを中心としたアフリカの産油国が追加減産に難色を示したことからOPECプラスとしての正式合意には至らず、自主的な減産という形になっており、市場では実効性に対する懐疑的な見方も少なくない。
だが今回は産油国の危機感も強く、追加減産はしっかりと行われる可能性が高い。2020年3月にもちょうど同じような状況で減産の合意ができず、サウジやロシアが逆に増産方針を打ち出し、さらには新型コロナウイルスの感染爆発による需要の大幅な落ち込みも加わって相場が急落した苦い経験があるだけに、同じ過ちは繰り返さないのではないか。
また昨年末までもう1つの大きな売り材料となっていた、アメリカやブラジルの大幅な生産増が、今後も続くとは考えないほうがよい。とくにアメリカのシェールオイルも、ブラジルの石油も深海油田からのものであり、どちらも生産コストが高いことに注意が必要だ。
実際、価格下落で採算が取れなくなっている油田が出てきている可能性も高く、価格低迷が続くなら生産は逆に減少することもありうる。
一方、需要面では、確かに世界景気の減速に伴う需要の伸び悩みに対する懸念は引き続き重石になると見ておいたほうがよい。だが石油は生活必需品であり、パンデミック当時のロックダウンのような極端なことでもない限り、需要が大きく落ち込むことはなさそうだ。
OPECプラスの追加減産がしっかりと行われるなら、需給は再び逼迫に向かうだろうし、もしさらに下落したとしても、押し目ではサウジやロシアが必要とあれば追加減産を打ち出す意向を示していることがしっかりと買いを呼び込むことになるだろう。
松本 英毅:NY在住コモディティトレーダー
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