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"久遠チョコ"バラ売りでヒットの意外なきっかけ 面白がってくれた百貨店のカリスマバイヤー

東洋経済オンライン / 2024年2月9日 11時50分

ただ、バレンタイン催事に呼んでくれる百貨店としては、客単価を上げるために高額の商品をできるだけ多くラインナップしてほしいというのが本音だろう。

望ましいのは、1箱2000円、2500円といった詰め合わせの箱を作って売ることだ。客単価も上がるし、あれこれ選ぶ必要がないのでお客さんの回転率も上がる。実際、そうしてほしい、と提案してくる百貨店もあった。

バラ売りしているよさもあって、久遠チョコレートのお客さんは、「あれもいい」「これもいい」「こっちをやめてあっちにしよう」と5分も10分もかけてあれこれ悩みながら、2枚、3枚と買っていくというスタイルになる。

僕はその合間に「このチョコレートに入っている茶葉は、石臼を回して手作業でパウダーにしているんですよ」といった会話ができるのを楽しみにしているのだ。すると、お客さんも「え? 手作業で挽いているの?」と喜び、久遠チョコレートのファンになってくれる、という具合だ。

カリスマバイヤーとの出会い

百貨店からすると極めて非効率ともいえるこのやり方を面白がってくれたのが、うめだ阪急のカリスマバイヤー高見さゆりさんだった。

豊橋本店がオープンした翌年の2017年、阪急百貨店うめだ本店の「バレンタインチョコレート博覧会」から声がかかった。チョコレート好きの人には、“バレ博”の愛称で親しまれる国内有数のバレンタイン催事だ。

できたてほやほやのルーキーブランドが、天下のうめだ阪急から声をかけてもらうのは異例のこと。

もちろん二つ返事で引き受けて、勇んで参加したまではよかったのだが、催事が始まって1週間で、久遠チョコレートの売り場だけ、なんと陳列棚がすっからかんに。

想像以上に売れ行きがよく、早々に本店の製造が追いつかなくなり、欠品が起こってしまったのだ。

もちろん大目玉を食らったのだが、その催事1年目の陳列棚は2台だった。しかし高見さんは2年目、それをなんと4台に増やしてくれた。

それは僕の自信になり、バラ売りの方向性を貫こうと吹っ切るきっかけにもなった。自信がなくて始めたテリーヌチョコレートのバラ売りは、やがて久遠チョコレートを象徴する商品となったのだ。

その後も、うめだ阪急のバレンタイン催事には連続して出店。途中、新機軸を打ち出そうと、生チョコやボンボンショコラ(なかにフィリングという詰め物をしたひと口チョコ)に手を広げようとした年もあった。

そんな試みには興味を示さず、「お客さんが足を止めて会話を楽しみ、好きなものを1枚、2枚と買っていくのが、久遠チョコレートのよさなのよ」と優しく諭してくれる高見さんなのだった。

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