インドネシア新型電車「中国受注」でも日本に商機 国産車は日本製機器採用、大統領選も影響?
東洋経済オンライン / 2024年2月9日 6時30分
さて、冒頭の話に戻そう。戦後長らく、首都ジャカルタの通勤鉄道には日本、韓国、オランダ、ドイツなどの政府開発援助によって車両導入が続けられてきた。近年、日本から導入された車両はKCIが自前で調達しているが、あくまでも中古である。親会社のインドネシア鉄道(KAI)は1年間にアメリカから機関車を100両、INKA製の客車を200両近く、いずれも新車で、かつ自己資金で導入しているという事実があるにもかかわらずだ。
これはKCIの運賃が政府により、異常なまでに安く設定されているからである。よって、KCIの輸送人員はKAIグループ全体の8割を占めているものの、売り上げに占める割合はわずか1割ほどという異様な経営状態だ。これこそが、KCIが長らく中古車を導入してきた理由であるし、運賃の低廉性と高品質な輸送を両立するために、政府もこれを認めてきた。よく勘違いされているが、決してインドネシアが貧しいということではない。
そして今回、政府はこうして5兆ルピアもの国費をKCIに投入した。予算面において、中古車両を導入する道理はなくなった。インドネシア経済を見くびってはいけない。
参入余地の大きいインドネシア市場
インドネシアの鉄道というと、しばしば親中、裏切りというワードがやり玉に挙がってくるが、そのような単視眼的視野は禁物だ。安易なインドネシア批判の拡大は、最終的に日本の国益を損なうものだ。
どうして、筆者がここまでインドネシアに拘るのか。それはビジネスチャンスがあり、それに比例するように多くの日本人鉄道関係者が活躍していることに尽きる。日中韓を除けば、インドネシアはアジアで最も健全に鉄道ビジネスができる相手と言っても過言ではなく、日系企業の参入余地がある。
インドやマレーシア、そしてベトナム、フィリピンなどに優良と言える案件は極めて少ない。国内産業が成熟しているか、あるいは政治的、財政的な問題で日本企業の入り込む余地がない。だから、そもそも鉄道案件の受注競争という情報が上がらない。かつてあれだけ盛り上がったマレーシアの高速鉄道計画から日本が自ら撤退したのは記憶に新しく、ベトナム、フィリピンも相手国事情による円借款プロジェクトの大幅な遅延で、日本企業に大きな損失を生んでいる。
インドネシアにはそのようなリスクが少ないにもかかわらず、絶対的情報量が多いことが、インドネシア=危ないという勘違いを生んでいる。このリスク感覚が日本製品の価格に転嫁されてしまう。
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