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障害者手帳をやっと手にした44歳男性の紆余曲折 「TOEIC975点」資格は多数だが、メンタルは悪化

東洋経済オンライン / 2024年2月9日 12時10分

「テープは呼吸法や瞑想(めいそう)法を教えるといった内容で、それを1日1時間ほど聞いていただけです。でも、それ以来、英単語や参考書の文字を見ただけで脳が異常に興奮するというか、情報に過敏に反応するようになってしまったんです」

不眠状態が4カ月ほど続いたところで、初めて精神科を受診。それでも症状は改善せず、思考や注意力の低下もみられるようになったため入院をすることになった。病院ではさまざまな薬物を投与され、一時は集中力が続かず中学生レベルの問題も解けなくなったり、歩くのもままならない状態に陥ったりしたという。

日本の精神医療をめぐっては、長期間の強制入院や身体拘束、薬漬けといった問題への批判がある。ただユズルさん自身は「私の場合は強制入院ではありませんでした。たしかに薬漬けの状態ではありましたが、『患者に合った薬物を探すためにいろいろと試している』という病院側の説明には納得しています」という。

結局、2回の入院を経て2年遅れで大学に進学。第一希望の学校ではなかったが、ゼミではゼミ長を務めるなど学業に専念した。一方で「友人との何気ない会話が苦手。飲み会に対しても不健全というイメージがぬぐえなくてサークル活動などからは距離を置いていました」と言い、交友関係は広くはないようだった。

自身の性格や体調を考え、比較的安定して働ける公務員を目指し、在学中から専門の予備校にも通った。しかし、いざ試験を受けると、複数の自治体などで筆記には通るものの、面接ですべて不合格となってしまう。悩んだ末に新卒での就職は諦めた。

精神疾患発症のきっかけとなった自己啓発テープについて、ユズルさんは次のように語る。「私には良くも悪くも効果が強く現れすぎたようです。トリガーにはなりましたが、遅かれ早かれ(精神疾患は)発症していたと思います」。

障害者雇用枠での就労という選択肢を絶たれ、非正規雇用で働いていたときは遅刻や無断欠勤はなかった。残業が月80時間を超えることが続き、体調を崩して辞めた会社からは後に「また戻ってこないか」と声をかけられるほど勤怠は真面目だったという。

一方で気が付くと、仕事以外のことで過度に活動的になることがあった。英語のスピーチサークルに参加したり、行政書士の勉強を始めたり、留学の準備を進めてみたり。「ハイテンションになってあれこれ手を出すのですが、どれもが中途半端に終わり、結局は落ち込む」とユズルさん。双極性障害におけるそう状態の典型的な症状だという。こうしたときは、仕事でもケアレスミスや指示忘れが続くようになる。

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