春節「日本に行くのやめた」中国人達が"集まる国" 人気の旅行先だったが手強い競合が現れる
東洋経済オンライン / 2024年2月9日 11時20分
アドラの日本行きクルーズ旅行を申し込んでいる人の多くは、話題の国産クルーズ船に乗ることが第一の目的だ。国慶節や春節の長期休暇の前には、検索数に基づいた「人気の旅行先」や旅行のトレンドに関する情報が多く出るが、今春節では日本に関する言及はあまり目立たない。
日本では中国の景気が減速しているから海外旅行を控えている、という分析も散見されるが、中国では「休暇が長いから海外に出かける」「一方で、景気がいまいちだから近場の海外が人気」というデータが多い。だったら日本はドンピシャのはずなのだが……。
処理水問題の影響払拭されず
日本旅行が盛り上がらない理由の1つは、処理水問題の影響が払拭されていないことだ。
東京電力福島第一原子力発電所が昨年8月下旬から処理水を海洋放出したことで、中国で激しい日本叩きが起きたことは記憶に新しい。海産物でなく肌につける化粧品など幅広い日本製品が中国人消費者に忌避され、その流れのまま10月の国慶節休暇に突入した。
もちろん、日本バッシングが起きているとしても、過去に日本を旅行したことがあるリピーターは以前と変わらず日本に行きたがっているという声は多い。だが、リスクを恐れ、中国では日本ブランドのマーケティングが縮小している。
2023年1~9月期連結決算で中国市場の業績が大きく悪化した資生堂とポーラ・オルビスホールディングスはいずれも、ライブコマースやインフルエンサーを起用したプロモーションの取りやめで、新規顧客獲得に苦戦していると説明した。
アリババグループも昨年11月の独身の日セールでは、中国の消費者向けに日本ブランドの売り込みを控えていた。(過去記事:中国「独身の日セール」日本ブランド大苦戦の深刻)
海外旅行でも同じことが起きている。日本に行きたい人向けには旅行商品を販売しているが、積極的なプロモーションは仕掛けにくい状況が続いており、その結果、日本旅行に関する情報が消費者に届きにくくなっているようだ。
「日本に行くのは今じゃない」
しかし処理水問題も、今回の春節で海外旅行先として日本人気が低下している最大の要因ではない。より大きな理由は競合の台頭だ。
中国のSNSや検索サイトで「春節」「海外旅行」と検索すると、上位にはシンガポール、マレーシア、タイをまとめた「新馬泰」という言葉が並ぶ。
大学生の娘を持つ上海在住の会社員女性(40代)は、昨年9月に「国慶節は娘の大学合格祝いを兼ねて日本に家族旅行しようと思っていたけど、航空券が高すぎてやめた。春節のときに行く」と話していたが、春節直前に「英語も中国語も通じるし、ビザもいらなくなったから」と旅行先をシンガポールに変更した。
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