KDDI、「ローソン5000億出資」に浮かぶ2つの懸念 三菱商事とは"折半出資"、見えづらいリターン
東洋経済オンライン / 2024年2月13日 7時10分
第2の懸念点は、KDDIがローソンの経営権を握っていないことだ。
今回のような商社と折半出資という形は、KDDIにとって実は初めてではない。連結子会社のJ:COMには、住友商事と50%ずつ出資している。
J:COM買収をめぐっては、生みの親でもある住友商事と経営権を奪い合った末、両社が株式を50%ずつ保有する共同経営の体裁を整えたうえで、社長人事はKDDIが指名する形をとった。そして実質的な支配力を持つ意味合いから、KDDIの子会社となっている。
他方で今回のローソンについては現時点で“子会社”にする予定はなく、人事の面においても、主導権は引き続き三菱商事側に委ねる想定だ。
2月1日時点のローソンの取締役5人のうち、竹増貞信社長を含む3人が三菱商事の出身だ。今年で就任9年目を迎える竹増社長が続投するかは定かでないが、「ローソンの社長は今まで通り、三菱商事から出す」(KDDIの高橋社長)という。
高橋社長は、「通信の分野であれば絶対に主導権を取りに行くが、小売りではあまり知見がない。ただ、小売りが価値を出すために通信を使ってもらうことは、われわれもプロ。そうした立ち位置をキープしていくのが今のスタンスだ」と説明する。
小売りという素人の領域で、経営の前面に立たないことは現実的判断と解釈できる。しかし50%出資という関与度合いの大きさに対して、KDDIが経営をコントロールしづらい立場にあることは、中長期的なリスク要因となる可能性もある。
TOB発表後のKDDI株は下落
KDDIの高橋社長とローソンの竹増社長は会見の場で、「未来のコンビニ」への期待感を何度も口にした。しかし具体的な中身が見えてこない以上、連携を通じたサービスの拡充がローソンの集客力をどこまで高められるかは未知数だ。国内市場が飽和状態にある中、海外市場への展開など対処すべき課題は多い。
こうした投資対効果への不透明感を警戒してか、2月9日のKDDIの株価終値は4467円と、提携発表前日の2月5日終値(4817円)から1割弱安くなっている。
KDDIの「思い切った投資」が実を結び、新生ローソンが雄飛する未来はくるのか。3社連合には、説得力のある提携の具体策を早期に示すことが求められている。
高野 馨太:東洋経済 記者
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