1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

『不適切にも』TVにとっての"コンプラ"現在地 クライマックスをミュージカルにするのはなぜ

東洋経済オンライン / 2024年2月15日 12時0分

しかし、ミュージカルの演出にすることによって、異なる価値観同士が互いを否定するのではなくひとつの音楽という共通の土台の上で語り合っている印象が強まる。つまり、“対立”ではなく“対話”であるという印象が強まる。

意見の食い違いはあるが、同じ土台の上に立って言葉を交わすことの必要性をミュージカルで表す。これこそ、討論番組などではなくドラマだからできる演出だろう。コンプラというテーマをドラマで取り上げる意味が、そこに凝縮されている。

コンプラが重要な課題であることは間違いないが、最初からはっきりした答えが用意されているわけではない。もちろん法令は順守しなければならない。しかし倫理的なことや社会規範などについては、事柄によってさまざまな考えかたがある。

おそらくこのドラマも、昭和は良かったと言いたいわけでもないし、昭和が間違っていると断罪したいわけでもない。むろん昭和世代から見れば、あの頃は良かったと思えるようなこともあるだろう。

だがノスタルジーに浸ろうというのがこのドラマのメッセージではないはずだ。コンプラを守るにしても、まずは率直に意見を述べ合うこと。その段階がまず必要ということだろう。

そして意見をぶつけ合うところに必ずしも対立ばかりが生まれるわけではない。異なる価値観が交わるところには笑いも生まれる。宮藤官九郎の巧みな脚本、相変わらず達者な阿部サダヲをはじめとした俳優陣の演技は、そのことも教えてくれている。

テレビはコンプラとどう向き合うべきか

むろんコンプラは、ドラマだけにかかわることではない。ある意味フィクションという言い訳が利かない分、バラエティのほうがよりコンプラを意識しなければならない場面も多い。

「これコンプラ大丈夫?」というようなワードをバラエティ番組で聞くことも増えた。難しいのは、どこまでが大丈夫で、どこからが駄目なのかということだ。

フジテレビの若手ディレクター・原田和実の企画・演出による『有吉弘行の脱法TV』(2023年11月13日放送)は、そんな現状に一石を投じる“コンプラバラエティ”として出色だった。

そこでの、「タトゥーはどこまで許されるのか?」を検証する企画。ラッパーなどミュージシャンは、タトゥーを入れていてもそのままテレビに映されることが多い。

だがお笑い芸人は、そうはいかない。ではタトゥーを入れているラッパーがお笑いライブでネタを披露しているところを映すのはどうなのか?

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください