1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「アリババからシフト」孫正義氏とマー氏の関係 巨大企業の経営者が共に歩んできた道のり

東洋経済オンライン / 2024年2月16日 7時50分

最終的に、マー氏とツァイ氏は2000万ドル(約30億円)の出資を受けることで、話をまとめた。

「素晴らしいCFO(ツァイ氏)がいたから決断できました」マー氏は東大での対談で、そう語った。

孫氏はさまざまな場で、マー氏の魅力を語っている。アリババの売り上げやビジネスモデルではなく、マー氏の目を見て、人を動かす力を持った生まれながらのリーダーと判断し、お金を使わせることに決めたという。

74億円が9.7兆円に

SBGの後藤芳光専務執行役員CFOは2022年の振り返りで、

「2000年以来総額74億円を投じたアリババが、23年間で総額9.7兆円の資金を生み出した」

「当時売上高がゼロだったアリババへの投資を決めた孫と、優れた経営手腕で中国での事業成長に挑んだジャック・マー氏が、相互に成長しながら残した実績は、歴史に残る素晴らしいウィンウィンの関係」と記し、「アリババの貢献には感謝しかありません」と続けた。

アリババ株を吐き出したことで、同社はSBGの連結対象から外れ、資本関係もなくなった。

後藤氏は資本関係の有無にかかわらず、「今後も同じ志を持つアリババとの協力関係は続きます」と強調するが、2020年に孫氏とマー氏は「卒業」と表現してお互いの企業の取締役を外れており、ビジネスパートナーとしての関係性は薄れている。孫氏は当時、アリババ株を「できるだけたくさん、長く持ち続けたい」と話したが、それも叶わなかった。

孫氏とマー氏は、ビジネスの現場でも戦友だった。アメリカのオークションサイトのeBayが中国に進出した際、孫氏はBtoB向けのECを行っていたアリババに、eBayに対抗してBtoC事業に進出するよう助言し、資金面で支援した。アリババがそのときに始めたのが、中国最大のECマーケットプレイス「タオバオ」だ。

孫氏とマー氏の人生観は異なる

東大での対談で、マー氏は2人の関係について「犬と狼は似ているが、違う」と説明した。孫氏がそれを受け、「犬と狼は似ているが違うという話が出たが、犬は犬同士、においでわかる。私はジャックを同じ種の動物だと嗅ぎ取りました」と続けた。

ただ、2人の人生観は大きく違うようにも見えた。ビジネスが人生そのものである孫氏に対し、教師出身のマー氏は「早くビジネスの一線から退き、教育や公益に力を注ぎたい」と公言していた。

彼は以前、中国の若者に「20代は良い上司を見つけましょう。30代は自分が何をやりたいかよく考えましょう。40代は得意なことをしましょう。50代では若い人を助けましょう。60代になったら家族との時間を大事にし、仕事のことはあまり考えないようにしましょう」とアドバイスしている。

マー氏は自らの言葉を実践し、2013年に48歳でCEOを、55歳の誕生日に会長を退いた。ダニエル・チャン(張勇)氏がCEO、会長を引き継いで後継者育成も盤石に思えたが、同氏は昨年、アリババ会長も会社分割後のクラウド事業会長も退任し、創業メンバーで「ジャック・マーの黒子」と言われるツァイ氏に後を託した。

マー氏は公の場から去って久しいが、社内チャットではアリババの向かう先や、新興EC企業「拼多多(Pinduoduo)」が時価総額でアリババを上回ったことについて発言している。

マー氏は今年、60歳を迎える。「仕事のことは考えないように」という若者への助言と反対の方向に向かっているように見える理由は、アリババの混迷を見かねたのか、それとも彼が本質的に「孫氏と同じ種の動物」だからだろうか。

浦上 早苗:経済ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください