イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…
東洋経済オンライン / 2024年2月16日 21時0分
であれば、GMSという「コンテンツ」は捨て、むしろ、そうしたコンテンツをさまざまに集め配置する「プラットフォーム」に変化することが一つの可能性としてあるだろう。つまり、ショッピングモール化である。
実は、ヨーカドーはこうしたショッピングモール化に舵を切ろうとしている。
近年の改革では、GMSとして扱う商品のうち、不採算部門である肌着以外の衣料品売り場をなくし、それらを専門店へと変化させようとしている。いわば、GMSという存在自体を否定する改革だ。
では、これで一安心かといえばそうではないと思う。というのも、「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではないからだ。そこで次の②だ。
②顧客ニーズをもっと汲み取り、消費者理解を進める
なぜ、テナントに人が集まるのか。それは入居するチェーンストアが、顧客に選ばれているからだ。なぜ、顧客に選ばれているのかといえば、それは顧客ニーズを満たしているから。
100均は安く、さまざまな商品が手に入るし、意外な商品があったりもして楽しい買い物体験を提供してくれる。ミスタードーナツは、美味しいドーナツを低価格で食べられ、居心地も良く、最近では多くのファンも生み出している。こうした人気の店舗は、常に消費者が何を求めているのかを敏感にキャッチし、それを経営戦略に活かしている。
あまりにも当然だが、消費者理解がすべてにおいて重要なのだ。消費者の動向を考えれば、GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ。
そこに消費者理解の姿勢はあるのか?
では、こうした消費者理解の姿勢が、イトーヨーカドーにあるかといえば、やはり疑問符が付いてしまう。それは、先ほども述べてきたところだ。
実は、ヨーカドーはもともと、消費者理解、消費者に寄り添う経営を大事にしてきた企業であった。その創業者である伊藤雅俊は、ヨーカドーの事業を多角化せず、GMS業態だけを守り続けた。それは、事業を多角化して、本業のGMSの売り場が荒れると顧客からの信用がなくなってしまうという伊藤の危機感にあったといわれている。
また、POSシステムによる単品管理を行ったのも早かったが、これも伊藤が、かつての個人商店のように「顔の見えるお客さん」がそれぞれどのようなニーズで商品を購入しているのかを的確に把握できるようにするためのものであった(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。
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