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ドミノピザ「鼻ほじ」バイトテロ騒動から得る教訓 バイトに倫理観を求めるのが間違っているのか…?

東洋経済オンライン / 2024年2月16日 19時0分

ただ、その前提のもとに浮かぶのが、「マニュアルを定めれば、避けられる問題なのか」という疑問だ。

マニュアルや就業規則は、破れば最悪の場合「解雇」となる重要な決まりごとだ。しかし、正社員ではない者にとって、それが抑止力として機能しているのだろうか。どれだけ炎上事案を知ったところで、先のコラムでも書いていたように、「なぜダメか」が血肉にならなくては意味がない。

ドミノの事案も「鼻に指を突っ込んだからNG」だと思っているようじゃ不合格だ。それはあくまでひとつの要素でしかない。

たとえば、マスクもせず、おしゃべりしながら調理している様子を見たとき、客にはどんな印象を残すのか。そもそも、キッチンに私物のスマートフォンを持ち込むことすら、衛生的にどうなのかという論点もある。

このあたりが性善説で通じないようであれば、残念ながらスマートフォンの持ち込み禁止や、従業員のプライベートSNSの監視なども、検討しなければならなくなるだろう。そうなったときに割を食うのは、まっとうに働いている大多数の従業員だ。一部の「やらかし」によって、罪のない店員まで同一視されてしまう。

それなりに常識がある立場からすると、「マニュアルを定めれば、守ってくれるだろう」とか、「(前回のバイトテロブームは知らないにせよ)外食に携わる者として、客テロの問題点には気づいているだろう」といった考えに至るだろう。しかし、それは甘い。ときに想像をはるかに上回る、稚拙な迷惑行為が起きてしまうものなのだ。

従業員の教育充実と意識向上、場合によってはスマホ持ち込み禁止など、一歩踏み込んだ厳格なルールづくりまで、さまざまな面から、バイトテロ対策を見直すタイミングに来ているのではないか。

ただ、現実問題として、そもそも正規雇用ではないアルバイトに、「企業人としての矜持」を求めるのは無理がある……と言ってしまうと、真面目に働いている多くのアルバイトの方々から「自分はしっかりやってるよ!」「その場のノリで不衛生な行為をしてしまうのは、『企業人としての矜持』よりずっと手前の話ではないか?」などとお叱りを受けそうだが、もちろんそういう人たちまでとやかく言う意図は一切ない。ただ、世の中には、しっかりしていない人もいるという話だ。

またSNS監視などの従業員チェック体制を、正社員と同等レベルまで高めるとなれば、コスト面から「わざわざバイトとして採用する必然性があるのか」となりかねない。各種事案の「ダメな理由」と「やらかした場合の社会的制裁」に気づいてもらうほうが圧倒的に近道だ。

ドミノ・ピザはスピード対応していた

企業のリスクマネジメント体制を構築するうえでは、法的な問題点だけでなく、SNS炎上などの倫理観も、常に意識しておく必要がある。その点、ドミノ・ピザ ジャパンは、「鼻ほじ」事案の発生防止こそできなかったものの、事態把握と経緯説明、社内処分など、これまで類を見ないスピード感で発表までこぎ着けた。

深夜2時に撮影された動画は、その日の午後にX(旧ツイッター)へ転載され拡散・炎上する。そして謝罪文が投稿されたのは22時台と、発生当日のうちに区切りを付けているのだ。

この初動の俊敏さは、今後のモデルケースになるだろう。動画投稿の数十時間後には、早くも法的措置の可能性に言及し、その翌日に解雇。「やらかした場合の社会的制裁」を知らしめるうえでの抑止力になるのでは……と感じるが、そうした筆者の予想もまた、オトナ視点の「甘い考え」なのかもしれない。

城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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