初代「プリメーラ」欧州的クルマづくりの衝撃 欧州COTY2位にも輝いた1990年代日産の意欲作
東洋経済オンライン / 2024年2月17日 11時30分
上記“輸入車感”は、1991年に追加された「5ドア(2.0e GT)」の存在が大きい。セダンだけれどハッチゲートを設けるこのスタイルは、「コロナ5ドアリフトバック」や、「ビスタ/カムリ」など、1970年代後半から1980年代にかけてトヨタが好んでいた、けれど日本では珍しい車型だった。
実際のリフトバックは、ワゴンほど荷室の積載量は大きくないし、車重は増えるし、騒音も大きくなるし、エアコンの効率も落ちるし……と、あんまりいいことはない。
しかしながら、少なくともプリメーラに関しては、イギリスで評価が高いとか、ヨーロッパの本家「カー・オブ・ザ・イヤー1991」で2位という情報も手伝い、ボディスタイルの“輸入車感”が、いい印象をもたらしたともいえる。
「本物志向」のメカニズム
エンジンはSR20DEで、あとからSR18DEが追加された。
中心となったSR20DEは性能と燃費を同時に追求して開発された直列4気筒DOHCで、1989年に「ブルーバード(S12)」のマイナーチェンジで用意されたのが最初だ。大ヒットした「シルビア(S13)」も、途中からこのエンジンを搭載した。
SR型エンジンは、ヘッドやブロックにアルミニウムを使い軽量化を図ったパワーユニットで、カムシャフトの駆動がベルトでなくチェインというのも、本格志向のユーザーの心をくすぐったものだ。
実際には、R32型GT-Rを頂点とする直列6気筒のRB型など、当時の日産にはよりスポーティなエンジンがあり、SR型はいまいちというネガティブな評価もあるようだ。けれど、ストック(チューンしていない状態)で乗るかぎり、SRは十分に役目を果たしてくれていたと思う。
プリメーラに話を戻すと、サスペンション形式はフロントがマルチリンクで、リアはパラレルリンク式ストラット。1990年にはフルタイム4WDが追加され、さらにビスカスカプリングで前後のトルク配分を制御する「アテーサ(4輪駆動最適制御システム)」を持った仕様も登場した。
私は、当時このプリメーラが大好きだった。ひとことで言うと「たいへんバランスのいいクルマ」だったからだ。
当時の日産には、シルビアのほかにも「180SX」「スカイライン」「ステージア」「セフィーロ」など、後輪駆動車も多く、大勢が前輪駆動方式へと移る前夜みたいなものだった。
そこにあってプリメーラは、硬めのサスペンションセッティングによって、アンダーステアなどパワフルな前輪駆動のネガをつぶし、カーブではくいくいと気持ちよく曲がってくれた。
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