民営化の布石?台湾鉄道「国営企業化」の大改革 蔡政権「最後の実績」、組織は変わるが実態同じ?
東洋経済オンライン / 2024年2月17日 6時30分
国営企業化後の組織は、理事会下の安全委員会、本社下の営運安全所に加え、エリアを4区に分けた各営業所に営運安全科を新設。中央集権的な体制からの脱却を図り、相互の連携を強化した安全管理システムや第三者による監視体制を構築するとしている。将来的には営業面でも分権化を進める計画で、多発する信号故障や、長距離運用が多いため遅れが常態化している列車運行の是正にも期待がかかる。
短期での黒字化達成には疑問の声も
一方、財務面では膨らんだ短期債務が解消される。2022年時点で台湾鉄路管理局は4208億元(約2兆147億円)に及ぶ負債を抱えていた。そのうち、前体制で大きく膨らんだ1700億元(約8139億円)に及ぶ既存の短期負債は減債基金へ移管することとなり、基金の財源は土地の売却で賄うこととなる。
このほか、654億元(約3131億円)が想定される旧体制の退職金、1909億元(約9139億円)におよぶ、建設などに使用され資産となる前受収益は政府の予算により賄うことで健全な財務管理を目指す。また、国営企業化後も収益性が見込めない地方の駅の運営については政府が補助を行う。これらの負債の解消でキャッシュフローは2026年にプラスに転じ、2028年には黒字化を達成すると見積もっている。
2022年時点の台鉄の負債とその処理 (行政府資料参照)
負債総額:4208.01億元(約2兆147億円)
短期負債:1484.47億元(約8139億円)→交通部による減債基金
旧制度の退職金:654.08億元(約3131億円)→政府の予算により支払う
前受収益:1909.74億元(約9139億円)→政府・台鉄により処理
短期借入金:159.72億元(約761億円)→台鉄により処理
この短期での黒字化達成目標に、民衆からは疑問の声も上がっている。それは1995年から28年間凍結している運賃値上げの具体的なスケジュールがいまだに示されていないためだ。実際、事業報酬率を運賃の1%を基準として、車種に合わせて11%から27%の値上げを行う案が検討されている一方で、政策により発生した赤字は政府が負担するという取り決めもあるため、まだまだ自立した経営が成り立っていないのが実情だ。
実際、国営企業化直前に董事長を引き継いだ鉄路局長が1年目に値上げを行いたいと語ったすぐ翌日に、台鉄側は値上げの計画を真っ向から否定するなど、意見のもみ消しあいが続いている。企業化した以上は将来的な民営化を目指した身を切った改革や、政治家の利権を伴わない政府とのスムーズな取り決めが求められる。
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