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伊藤忠も動かすイスラエル「大量虐殺」国際裁判 南アフリカの提訴で出た暫定措置命令の影響度

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 7時50分

驚くべきことに、イスラエルが選んだ「国籍裁判官」も、この扇動の防止を求める命令と、人道支援を可能にするための命令の2点に関しては賛成しているのだ。

ICJの裁判官はさまざまな国から選ばれており、日本人もいる。15人の裁判官の中に裁判当事国の国籍者がいない場合は、臨時的に追加することができる。イスラエルは自国籍の裁判官がいなかったため、元司法長官のアハロン・バラク氏を選んだ。

バラク氏は1936年にリトアニアで生まれたユダヤ人で、ナチス・ドイツによるホロコーストの生存者だ。そのバラク氏が「イスラエルが行っていることはジェノサイドではない」との理由で暫定措置命令6つのうち4つに反対している点は、イスラエル政府と同様の立場に見える。

一方バラク氏は、緊張の緩和や人道法の観点から、虐殺の扇動防止と、人道支援に関する2つの裁判所の命令に賛成し、イスラエルの行動を抑制しようとしている。萬歳教授は、「イスラエルは軍事強硬派一色ではなく、こういう人をICJに送り込む、多様性もある社会であるということに留意しなければならない」と話す。

裁判所の命令によれば、ガザでの人道支援を阻害することも、ジェノサイドへの加担になると言える。命令の出た翌日の27日、日本の上川陽子外務相は「誠実に履行されるべきもの」と、裁判所の命令を支持する声明を発表した。

しかしその翌28日、日本政府は矛盾する行動をとった。ガザ最大の人道支援機関であるUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)の職員が、昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃に関与したという疑惑から、UNRWAへの資金拠出停止を表明したのだ。

UNRWAは、ガザの人口200万人のうち3万人を雇用する、いわば「地元の一大企業」だ。それだけでなく、55万人の子どもたちが通う702校の学校の運営や、予防接種や妊産婦検診などの提供、生活困窮者へのセーフティネット支援、起業家向けの融資サービスなど、生活に必要なあらゆる役割を担っている。

国連は現在疑惑の調査を進めているが、日本やアメリカ、ドイツなど主要な拠出国が支援を停止していることから、UNRWAは2月中にも必要な資金を手当てできなくなる見込みだという。弁護士で、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの副理事長を務める伊藤和子氏は「UNRWAへの資金拠出停止は、経済的なジェノサイドとも言える。絶対にすべきではない」と話す。

南アフリカが声を上げた理由

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