伊藤忠も動かすイスラエル「大量虐殺」国際裁判 南アフリカの提訴で出た暫定措置命令の影響度
東洋経済オンライン / 2024年2月19日 7時50分
なぜ今回、南アフリカがイスラエルを提訴したのか。
実はパレスチナと南アフリカには、共通の歴史がある。「入植してきた白人が、現地に住んでいる人々に徹底的な差別を行い、自己決定権を奪ってきた」という人種差別主義(アパルトヘイト)の歴史だ。南アフリカは廃止を勝ち取ったが、パレスチナでは続いているという認識をしていた。長年にわたってパレスチナを支持し、イスラエルとは独自に交渉を続けていた中での提訴だったのだ。
さらに、ICJに提訴する資格があるのは国連加盟国と定められている。そのため、正式に国家として認められていないパレスチナの提訴が認められるかは、明確ではなかった。その意味で、第三者である南アフリカの提訴は、パレスチナにとって画期的なものだった。
今回の裁判でイスラエルが「欠席裁判」を選択せず、出席した意味も大きい。「ヒートアップしがちな紛争当事国に、法的解釈から行動を見直す機会を与えることができる」(萬歳教授)からだ。今後も裁判は続く。イスラエルを孤立させず、裁判を含む国際秩序の中で、ガザでの人道危機を低減させる努力も重要となる。
ICJは2004年にも、イスラエルによる分離壁建設を「国際法違反」と判断し、占領地での国際人道法遵守を求める勧告的意見を出している。さらに遡れば、1960年代頃までは国連安保理が、イスラエルに占領地から撤退するよう求める決議を採択している。しかしこれらはイスラエルにも、国際社会にも放置され、違法状態が常態化していた。
昨年10月のハマスの襲撃は、長年にわたって国際社会がパレスチナでの国際法違反や人権侵害を放置してきた中で起こったものでもある。一刻も早い停戦を実現するだけでなく、その先でパレスチナ情勢の具体的な改善を実現できるかが問われている。
兵頭 輝夏:東洋経済 記者
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