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「お見舞い」「談話」北朝鮮が日本に発信する意図は? 日本が思っている以上に北朝鮮の対日姿勢は一貫している

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 8時0分

かつて金総書記の祖父で故・金日成主席は、日本メディアの訪朝団と面会し、「日本は朝鮮の隣国です。今後は友好関係をいっそう発展させなければならないと思います。われわれは日本人民との友好を願っており、それをさらに発展させることを一貫して主張しています」と述べながら、多くの訪朝した日本人と面会してきた。

北朝鮮外務省の外交官で日朝国交正常化交渉を担当し、日本とも深いパイプを持つ宋日昊(ソン・イルホ)大使は2018年、「金日成時代から日本は近くて遠い国ではなく、近くて近い国であり、同胞も住んでいる。そのような日本と善隣関係を持つことはとても重要なことであり、これは北朝鮮の一貫した立場だ」と東洋経済に対して話したことがある。

彼の著書『金日成主席と日本』の中でも、国交のない日朝間でありながら、日本には善隣友好関係を持とうとする姿勢で一貫していると説明する。これが、現在の金正恩政権でも基本的なスタンスだというのだ。

金与正「談話」の真意は?

間欠泉的に発信される北朝鮮の対日メッセージではあるが、その真意が金日成時代から変わらないとすれば、2024年2月15日の金与正・副部長からの「談話」はどう解釈すべきか。

岸田首相が2月9日、衆議院予算委員会で「(拉致問題の解決に向けて)大胆に現状を変えていかなければならない」と発言した。

これを受けての談話のようだが、談話では「解決済みの拉致問題を障害物としなければ」と条件を付けたうえで、岸田首相のこの発言を「肯定的なものとして評価されないはずがない」と述べた。

さらに「日本が政治的決断を下せば、両国がいくらでも新しい未来をともに開いていける」「平壌を首相が訪問する日が来る可能性もある」と踏み込んだ内容の談話となっている。

2023年5月29日、北朝鮮外務省の朴尚吉(パク・サンギル)外務次官は、「日朝両国が互いに会うことができない理由はないというのが共和国(北朝鮮)の立場だ」との内容の談話を発表している。だが、「(安部政権と変わらず)具体的な行動がなければ関係改善はおろか対話もない」とも付け加えている。

これもその2日前となる同年5月27日に岸田首相が「私自身、わが国自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことがきわめて重要であると考える」「大局観に基づき、地域や国際社会の平和と安定、日朝双方のため自ら決断していく」と発言したことを受けて発表されたものだ。

前出の金与正談話は、朴尚吉談話が出されてもこれといった行動が見えない岸田首相にその内容を再び想起させようと、岸田首相が前向きな発言をしたタイミングをとらえて出されたものではないか。

ボールは岸田首相の手に

本来、金副部長は対韓・対米関係を担当しており、対日関係は彼女の管掌から外れている。それでも、金副部長が「個人的な見解」としてあえて発表したのも、岸田政権が北朝鮮との関係で動くのか動かないのかを見極めるための談話だったと思える。

こうしてみると、ボールは日本の手中にあると北朝鮮は考えているようだ。政治資金問題をはじめ国内問題で支持率が低下し、問題解決に汲々としている岸田首相だが、自分の発言に責任を持ち自ら述べたように、大局観を持って行動できるかどうか。北朝鮮はそこを見極めている。

福田 恵介:東洋経済 解説部コラムニスト

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