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半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収

東洋経済オンライン / 2024年2月20日 7時0分

「従来であればメカだけで事足りた製品の機能も、エレクトロニクスで決まるようになってきている。一方で、購入品が主流のメカ設計と違ってエレクトロニクスの設計では部品を組み合わせる専門知識が不可欠。だからこそ幅広い産業のプレーヤーが使いやすいツールを、プラットフォームとして提供していきたい」

柴田社長が会見で語ったのは、半導体・電子部品と、ルネサスが主顧客とする自動車や産業機械メーカーとを取り巻く環境の変化だ。製造業に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトルの赤山真一パートナーも次のように解説する。

「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」

半導体産業を30年以上見てきた技術ジャーナリストの津田建二氏は、ルネサスの目指すものが「今までになかったビジネスモデルだ」と次のように評価する。

「これまでは半導体メーカーのような〝電気屋〟と、それを組み合わせて電機製品を造る〝機械屋〟の役割は分かれていた。この垣根を徐々にとはいえ取り払おうとしているように見える」

一方で、ある国内半導体メーカーの関係者は懸念も示す。

「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」

前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう。

「伝統的メーカー」のままではいられない

もちろんこうした見方は柴田社長も承知のうえだ。「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる。われわれ自身が、一緒に仕事をしていくパートナーと競合にならないことが大事」と強調する。

むしろ強く抱くのは、「デジタル化の流れは不可避。『伝統的な半導体メーカー』でい続ける限り、いずれマージナライズされてしまう(潮流から外れる)だろう」という危機感だ。

昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する。

石阪 友貴:東洋経済 記者

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