「安全になると不安が増す」パラドックスの理由 災害、事件、事故による死者数は減少トレンド
東洋経済オンライン / 2024年2月21日 12時20分
今年は年初から能登半島地震やJAL機の事故などがあり、国民の安全が脅かされています。「日本の安全神話は崩壊した」と言われることもありますが、実際はどうなのでしょうか。日本社会の「安全」について、関連する「安心」と併せて考えてみましょう。
自然災害・交通事故・他殺による死亡者数は減少
生命の安全というと国民にとって気になるのが、自然災害・交通事故・殺人事件(他殺)でしょう。この3つによる死亡者数の戦後から現在までの推移を確認します。
①自然災害
自然災害による死亡者数は年ごとの変動が大きく、阪神・淡路大震災があった1995年の6482人と東日本大震災があった2011年の2万2575人は突出した数字になっています。ただ、それ以外は近年100人を切る年もあり、戦後・高度成長期と比べてかなり減少しています(内閣府「防災白書」)。これは、戦後の復興から高度成長期にかけてインフラ投資が活発に行われ、国土の強靭化が進んだことによるものでしょう。
②交通事故
戦後の自動車の普及とともに交通事故による死亡者数は増え続け、1970年には1万6765人に達しました。日清戦争での日本の戦死者数(2年間で1万7282人)に迫ったことから「交通戦争」と言われ、大きな社会問題になりました。
しかし、警察や小中学校を中心に安全対策を進めた結果、その後は減少に転じました。2023年は前年比68人増の2678人と8年ぶりに増加に転じましたが、ピークの6分の1という低水準です。
③殺人事件(他殺)
戦後の混乱期から1950年代にかけて、他殺による死亡者数は年1500人以上で推移していました。しかし、1955年の2119人をピークに減少を続け、2022年は213人とピーク時の約1割にまで減っています(厚生労働省「人口動態統計」)。これは、警察機能の強化、所得水準の向上、若年層の人口減少などによるものでしょう。
このように、地震以外の自然災害や交通事故・殺人事件による死亡者数は激減し、主要国では最少レベルになっています。統計から判断する限り、「安全神話が崩壊した」どころか、世界で最も安全な社会が実現したと言えるでしょう。
安全になると不安が増す?
国民が安全に暮らせるようになったことは、平均寿命が84.3歳(2022年)と世界最長になった=国民が健康になったことと並んで、戦後の日本が世界でもまれな成功を収めた証しです。
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