テレビ局決算で見えた「楽しくなければ…」の終焉 若手が勝手に作ればテレビは自然に面白くなる
東洋経済オンライン / 2024年2月21日 11時50分
2024年度末、つまり来年春から稼働させる予定で、ずいぶん早い発表だが先んじて世に知らせることで徐々に周知を図り、導入するテレビ局も増やしていく考えだ。2月2日には、東海地区の系列局、中京テレビが早くも名乗りを挙げた。
テレビCMの取引を変える考えは、前々から業界内で議論としてはあったが、変えるハードルが高いうえに旧来の手法にこだわる声も大きく、進まなかった。ここへ来てテレビビジネスの厳しさが増したため、具体化の流れができた。ただ、これによって放送収入の減少が食い止められるかは、やってみないとわからない。言えるのは、これまではやってみないとわからないことはやらなかった業界が、やってみる方向に転じているということだろう。
「楽しくなければテレビじゃない」はもう通用しない
さて、気になるのがフジテレビだ。放送収入が9.4%の減少と、もっとも大きい。フジテレビが特に放送収入を落とす傾向が続き、いつのまにか民放4位にポジションが固定した。
昨年秋の改編では「やっぱり、楽しくなければテレビじゃない」をスローガンに掲げた。これを聞いた時、私は思った。「そこに戻っちゃダメでしょう」と。
そんな中、年明けに胸が苦しくなるような事件が続けて起こった。松本人志の性加害疑惑、そしてドラマの原作者の死。関係づけるのは当事者に失礼と思いつつ、私には関係があるように感じられてならない。
テレビはもう「楽しくなければ」ではいけないのではないか。
フジテレビは70年代まで際立った存在ではなかったのが、80年代に制作の外注主義をやめて社内の若手たちが好き勝手に番組づくりを始めたら、突然トップの座に躍り出た。自由にのびのび作る番組はすべて当たり、当時若者だった私に「ぼくらのテレビ」と思わせてくれた。
この時、登場したスローガンが「楽しくなければテレビじゃない」だった。映画業界から電気紙芝居と揶揄されたのを見返すためにまっとうなものづくりに真面目に取り組んでいたテレビ業界に、あっけらかんと宣言したのだ。楽しければいいじゃないかと。
90年代以降は、各局がフジテレビを目標にし、憧れ、追いつこうと頑張った。そのモチベーションがテレビ全体をひっぱり、面白くした。2010年代、フジテレビがはっきり凋落し始めると、他局の人々は「フジテレビに元気になってもらわないと」と本気で心配したものだ。引っ張っていってくれるのはフジテレビのはずだとみんなが思っていた。
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