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テレビ局決算で見えた「楽しくなければ…」の終焉 若手が勝手に作ればテレビは自然に面白くなる

東洋経済オンライン / 2024年2月21日 11時50分

その頃でさえもう、過去の話。答えは出ているではないか。「やっぱり、テレビは楽しくなければじゃダメなんだ」と。

松本人志の性加害が事実かどうか、私にはわからない。ただ現実として今明確なのは、彼はどうやら当分テレビに出られないということだ。松本人志は90年代からずーっと、テレビの楽しさを切り拓いてきた。新しい笑いを創造し続ける、「楽しくなければ」の体現者だった。

だがいま、楽しくなければテレビじゃない、はもう通用しないのではないか。彼を失って、テレビ業界はそこに気づくべき時だと私は思う。

漫画がドラマ化された「セクシー田中さん」は、なんとなく見始めたら、自信がなくても登場人物たちが前を向いて生きていく姿に感動した。自分よりずっと若い女性たちの物語に共感できた。性別や年齢を超えた普遍性があったからだろう。どうやら脚本化のプロセスで恋愛要素を強めようとテレビ局が望んだが、芦原さんはそんな脚本に自ら手を入れ、原作を損なわないように頑張ったらしい。

何でもかんでも物語に恋愛の要素を入れないといけない、というのもテレビドラマの世界の思い込みではないだろうか。そこにテレビ業界の大きな誤解があったのではないか。80年代に生まれた「トレンディドラマ=恋愛」の公式を持ち込もうとした結果、原作者との間に食い違いが起きてしまった。実際にどうだったかは、日本テレビが調査をすると2月15日に発表したので、その結果を待ちたい。

「何を楽しくするのか」が問われている

楽しくなければテレビじゃない、それが通用した時代はもう終わったのだ。ただ、これまでのテレビ業界がやってきたことがムダになるわけでもないとも思う。

楽しくなければと番組を作ってきたテレビ業界には、「楽しく作る」ノウハウが残された。これからは、それをどう使うかではないか。楽しくなければ、ではなく、何を楽しくするのか。いま問われているのはそこだと私は思う。

SDGsが持ち上げられ、社会課題の解決が必要だと言われるが、そういった深刻になりがちな題材も、テレビは楽しく描いたり伝えたりできるはずだ。実際、そういう番組は少しずつ出てきている。感度のいい今の若い現場の作り手たちなら、のびのび作る環境を整えれば自然にそんな番組を作り始めると私は想像する。大事なのは、上が過去の栄光で現場を縛らないことだ。80年代のフジテレビがそうだったように、若手が勝手に面白いと思うことを番組にすれば、テレビはまた面白くなると信じている。

境 治:メディアコンサルタント

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