懸命に働く人に教えたい「社畜化」せず生き抜く術 経済評論家・山崎元が指南する「これからの働き方」
東洋経済オンライン / 2024年2月22日 11時10分
商品を生産する工場があって機械を含む設備があればこれが資本の一部だというのは納得しやすい。商品の原材料も資本の一部だし、生産に必要なノウハウの特許、本社のビルなども資本の一部だ。
また、現金や預金もあるだろう。これは、原材料を購入したり、賃金を支払ったりするために使われるかもしれないし、生産設備に投資されるかもしれない。しかし、引き出されて株主が消費してしまうかもしれない。
「資本」とは会社の雑多な財産の集合体に貼られた単なるラベルのようなものだ(図2)。
●図2
「資本」自体に固有の意思や運動法則がある訳ではない。右も左も、経済学の多くの議論は、資本という言葉を曖昧に使って現実の説明に失敗しているというのが父の意見だ。
資本の持ち主である資本家から見て、資本となっているものの原資を誰が出しているかによって、銀行や支払いを猶予してくれる売り手などからの「借り入れ」である他人資本と、株式を通じて所有権のある自己資本の2種類がある。
会社の利益はどこから発生するのだろうか。「資本」という雑多な財産が入ったプールの周辺にいる利害関係者を見てみよう。
結果的に利益が出るとすれば、資本か労働かいずれかに起因するはずだが、この際「資本を利用する労働」に注目しよう。
ある典型的な労働者が、一日に会社にとって平均的には2万円の利益に相当する生産に関わっているとしよう。一方、この労働者に対して会社が払うべき賃金は1万円だとする。資本には1万円相当の利益が貯まる。
このようにして貯まった利益の一部は、銀行からの借り入れに対する利息や返済に回されるだろうが、その残りは株式を通じて資本家のものになる。
資本設備を増やしながら、このような条件での労働者の雇用を拡大することで、会社は規模を大きくして、利益を拡大することができる。
なお、新製品の発明や生産方法の改善のような大きなものから、商品の売り方のような小さなものまで含めた技術進歩も企業の利益の源泉になっていて、比較的頻繁に発生しているが、この利益も資本のものになりやすい。
リスクを取りたくない労働者が安い賃金で我慢する
先の、2万円の生産に貢献して1万円しかもらわない労働者が、不満で不本意なのかというと、そうでもない。彼(彼女)は、たとえ一日に1万円でも、安定した雇用と安定した賃金を求めているからだ。
安定(=リスクを取らないこと)と引き換えに、そこそこの賃金で満足する。合意の上の契約だ。彼らこそが、世界の養分であり経済の利益の源なのだ。
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